1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

地理で考える「日本の都市」に城壁が存在しない謎 世界のほかの都市では作られているものの…

東洋経済オンライン / 2025年1月16日 18時0分

姫路城(写真: KAZE / PIXTA)

日本史と地理は、別々の科目として学びますが、多くの接点があります。『日本史と地理は同時に学べ!』を上梓した駿台予備校地理科講師の宇野仙氏が、世界と比較して日本の都市には城壁がほとんどない理由を解説します。

城壁が広がる世界の都市

日本の都市と世界の都市を比較すると、日本の都市に見られる1つの特殊な部分が浮かび上がります。それは、「城壁がない」ということです。

【写真】『日本史と地理は同時に学べ!』(宇野仙)では、それぞれの時代を日本史と地理の両方の視点から解説

世界的に見ると、王がいる都市の周辺には、王を守るために壁が作られている場合が多いです。市街地が城壁で囲まれた集落は、城塞都市・城郭都市とも呼ばれます。

例えばイラクのバグダッドには、今でも古代の城壁が残っています。イタリアにもアウレリアヌス城壁などが残るほか、トルコのイスタンブールも市街地を囲むように城壁が広がっていたと言われており、現在でも訪れることができます。漫画「進撃の巨人」でも、主人公たちは3つの壁に囲まれた都市に住んでいるという設定でしたね。

一方で、日本は都市全体を囲むような城壁はほぼ存在しなかったと言われています。もちろんまったく存在していなかったわけではなく、「土塁」と呼ばれる土で作られた堤防は存在していました。またその一部に石を使った「石垣」や、土や石灰を使った「土塀」と呼ばれる塀も存在しています。

しかし、それらは外国の城壁とは大きく異なります。なぜ日本には、城壁が少ないのでしょうか?今回は地理の視点を踏まえながら、解説したいと思います。

まず、「なぜ日本に城壁が少ないのか」の答えを考えるためには、「そもそも城壁とは、なぜ作られるものなのか」について考えなければなりません。

言うまでもなく、城壁は戦乱が発生したときに、外敵から自分たちの身を守るために作られているものです。城壁が高ければ、侵入者からの攻撃を防ぐことができます。

でもこれは、周りが平原で囲まれている地域の場合が多いです。平原であれば、四方から攻められる可能性があります。そこで四方を守るために城壁が必要になります。

一方で日本は多くの山や川に囲まれた地形になっています。例えば城の後ろに山があることで背後を守ったり、海や川があることで外敵が攻めるのは困難になります。

例えば鎌倉は、3方向が山に囲まれていて、残りの1方向は海だったため、攻めにくい立地をしています。だからこそ鎌倉に幕府が置かれたと言われています。このように、人工的な城壁がなくても、自然の要塞で防御することが可能なのです。ですから日本では、壁の代わりに自然の力を活用していたと考えられます。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください