1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

JAL「パイロット飲酒問題」、現場の警告は届かず 客室乗務員や整備士は不安の声を上げていた

東洋経済オンライン / 2025年1月16日 8時0分

しかし、3時間も出発を遅らせたうえで「ゼロ」になったことに疑問を抱かなかったのだろうか。ある航空業界関係者は、「アルコール検査で数値が確認されれば、われわれはまず過剰飲酒の可能性を考える。最初から誤検知を疑ったら検査の意味がない」と話す。

現場を熟知するJALのOBも首をかしげる。

「なぜ、東京では軽々に誤検知と判断したのか。アルコール検知も疑われる事案で日本時間の午前中に3時間以上も遅延している。南運航本部長にも情報が届いて然るべき事案だ。安全統括管理者である赤坂祐二会長の責任も含め、会社の安全管理体制の根本が問われる問題だ」

前出の秀島氏は、「運航ありきの事なかれ主義の典型だ。大勢の乗客の命を預かる航空会社の体をなしていない」と厳しく指摘する。

事業改善命令が続いた2019年、当時は社長だった赤坂氏は「(飲酒問題の背景には)不都合なものに目をそらす事なかれ主義の横行があった」と自ら語っていた。自ら安全統括管理者となり、社内の意識改革に臨んだはずだったが、5年以上が経った今も、状況は何一つ変わっていない。

今回の取材でわかったことがもう一つある。

メルボルン空港での一連のトラブルについて、運航管理の最高幹部である下口拓也オペレーション本部長、乗員管理の最高幹部である南運航本部長が出発前に情報を得ていたにもかかわらず、欠航の判断を下せなかったことだ。

南運航本部長は「(2人は)本来乗務させられない状況だった」と述べている。

事態の深刻さは伝わっていたのか

JALの説明では、客室乗務員らの進言について報告を受けた下口オペレーション本部長は事態の深刻さを把握できず、「関係者でしっかり話しあって対応するように」と指示しただけだった。

同様に進言の情報を得ていた南運航本部長は、副機長の再検査の結果がアルコールゼロの状態であることを再確認したうえで、「運航乗務員を乗務に就かせて問題ないと判断」(広報部)し、下口本部長にもその旨を伝えた。

2人に詳細な情報が伝わらなかった可能性はあるものの、そのことを含めて結果責任は免れないだろう。

1月7日、鳥取三津子社長は都内のホテルで開かれた経済団体の新年交礼会に出席し、「今年は上昇気流に乗る」などと語っていた。

飲酒問題については、「組織として管理が不十分だった。経営のリスク管理の問題だと思っている。これ以上お客さんに不安を抱かせることのないようしっかりやっていきたい」と決意を述べるだけで、自らの責任については触れなかった。

乗客の命を預かる企業のトップとして鳥取氏はJALを立て直していくことができるのか。まずは1月24日が提出期限の国交省に報告する再発防止策の中身が問われる。

森 創一郎:東洋経済 記者

星出 遼平:東洋経済 記者

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください