戦後の日大を支えた異形の組織「日本会」の正体 日本の権力中枢が集ったそうそうたる顔ぶれ
東洋経済オンライン / 2025年1月17日 10時0分
田中英壽理事長体制での一連の事件を経て、2022年7月、作家・林真理子氏を理事長に迎えた日本大学。改革が進むかにみえた新体制だったが、アメフト部薬物事件、重量挙部・陸上部・スケート部における「被害額約1億1500万円超」もの金銭不祥事などが立て続けに起こっている。日本最大のマンモス私大「日大」は、どのような経緯をたどって現在に至ったのか。
話題の『地面師』著者で大宅賞作家でもある森功氏の新刊『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』の第2章「中興の祖『古田重二良』の罪」から抜粋し、全4回に分けて転載する。
知る人ぞ知る保守組織「日本会」
〈日本会は、政財界の大物を世話人とする右翼暴力団で、スト突入後、数度全共闘、各闘委が脅迫されている。日本会の実態は、その世話人を見れば明らかである〉
巻末の資料にそう記された分厚い記録集がある。題して『新版 叛逆のバリケード』(日本大学文理学部闘争委員会書記局/『新版・叛逆のバリケード』編集委員会編)。原本は日本全国の大学で紛争が燃え盛る渦中の1968(昭和43)年10月20日、日本大学全学共闘会議(日大全共闘)書記長に就任した文理学部の田村正敏が提案し、自費出版された『叛逆のバリケード』である。
言うまでもなく全共闘は、60年代後半に日本各地の大学に結成され、それぞれが独自色を打ち出して学生運動を展開した。なかでも東京大学の東大全共闘と日本大学の日大全共闘による学生と大学側の熾烈な闘争には、警視庁が手を焼き、ある種の市民運動ブームを巻き起こした。
日大全共闘の『叛逆のバリケード』は、本の題名どおり文理学部を中心に校舎をバリケードで封鎖して大学執行部と対峙した日大新左翼学生たちのドキュメントである。2008(平成20)年9月30日に新版として改訂された。
そこに記された「日本会」は、日大が呼びかけて1962年12月に社団法人の認可を受け、設立された。知る人ぞ知る保守、右翼組織だ。社団法人から内閣府の認定する公益社団法人に改組され、今も存在する。ウェブサイトを覗くと、理事長の向野誠がこう挨拶文を寄せている。
〈社団法人日本会が設立されてから現在まで、営々と流れる「総調和」の精神は、混沌とした世界情勢の中でますますその重要性が増しております。民族・宗教の対立、政治思想の対立、そして地球規模の気候変化、人口の増加と貧困問題……、「世界調和と人類繁栄」の構築という私共の掲げる「総調和」の精神は、古くて新しい、私たち人間の「生きる」というテーマの追求でもあります〉
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