遊女を紹介「吉原の情報誌」巡る江戸の版元の変化 蔦屋重三郎も「吉原細見」の販売から事業開始
東洋経済オンライン / 2025年1月18日 9時0分
今年の大河ドラマ『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』は横浜流星さんが主演を務めます。今回は主人公の蔦屋重三郎が書店経営を始めた当時の時代背景を解説します。
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22歳で書店を開業する重三郎
吉原に生まれた蔦屋重三郎。重三郎の父は丸山重助、母は津与と言いましたが、重三郎が7歳のときに両親は離縁してしまいます。
その後、年少の重三郎は、商家の蔦屋(喜多川氏)の養子となります。蔦屋は吉原に所在したと思われますが、確かなことはわかりません。また、何の商売をしていたのか、茶屋(遊客を遊女屋に案内する)なのか、出版関係の商売だったのかも不明です。
しかし、何らかの商いをする家であったことは確かなので、少年・重三郎に大きな影響を与えたと推測されます。
10代の重三郎がどのような生活を送っていたのかを示す史料はありません。重三郎の活動が判明するのは、20代となってからです。安永2年(1773)、重三郎は22歳のときに、書店を開業します。
場所は、新吉原大門口。出版社である鱗形屋から毎年刊行される「吉原細見」の小売り(卸売商などから仕入れた品物を、消費者に売る)からスタートしたのです。
「吉原細見」とは、吉原の妓楼(遊女を置き、客を遊ばせる店)、茶屋、遊女の名を絵地図のようにして紹介した、今風に言えば「吉原情報誌」のことです。
「吉原細見」は、江戸時代初期の貞享年間(1684〜1688)頃には刊行されていたと言います。徳川将軍で言うと、5代将軍・徳川綱吉の頃です。
「吉原細見」は需要があったようで、享保年間(1716〜1736)には、「吉原細見」を出版する版元も増えてきます。ちなみに、享保年間というと、8代将軍・徳川吉宗の時代です。
江戸系と京都系の書商の競争
隆盛期の「吉原細見」は、鱗形屋孫兵衛・相模屋与兵衛・鶴屋喜右衛門・相模屋平介・三文字屋亦四郎・山本九左衛門らが刊行していました。ところが、1738年頃からは、鱗形屋と山本の2つの版元だけが刊行するようになりました。さらに時が経つと、鱗形屋のみが「吉原細見」を刊行するようになっていきます。
鱗形屋は、草双紙や芝居本ほか、さまざまな書物を刊行してきた江戸の老舗出版社です。17世紀中頃の創業と言われています。鱗形屋が創業した頃は、京都系の書商が力を持っていました。江戸で誕生した書商との間で、市場をめぐり、競争が展開されます。
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