「中居氏騒動」フジ社員に伝えたい"企業防衛"論理 「もし会社が消滅するかもしれない」事案起きたら
東洋経済オンライン / 2025年1月18日 17時30分
企業ではないですがモリカケ問題のときも、裁判などで事実が部分的に明らかになりましたが、組織的な「隠蔽」で、結果として官僚組織は守られています。
そういった悪しき前例を考えると、フジテレビも放送免許を取り上げられることはないだろうと私には思えるのですが、当事者はそんなことは言ってはいられません。万が一、偉い政治家が「一社ぐらい潰しておいたほうが、その後メディアが言うことを聞くようになる」などと考えるかもしれないので、とにかく必死で対応するものなのです。
「大きすぎる悪事」が存在した場合の組織の動き方
ここでいったん話を整理します。
企業の不祥事について一般的には、悪事が暴かれて、悪い人が退出して、その後、同じことができないように対策が打たれることが一番いいことです。三菱UFJ銀行の貸金庫事件は若干時間がかかりましたが、そのような方向に向かっています。
ただ仮に大きすぎる悪事が存在した場合は違うという話をしています。組織をなくさないための組織防衛のメカニズムが働く結果、第三者機関の調査をサボタージュさせ、推定無罪の原則で誰も裁かれないという着地を目指そうとする場合があるのです。
そうなるとまた同じことが起きるということです。問題などなかったのだから抜本的な対策は打ち出されず、それでも数年は目立った行動は自粛されますが、十年もたつとまた同じような被害が別の場所で発生するわけです。
これは組織を守るために、将来の従業員が犠牲になることを意味します。モリカケのような決着をすると、また何年かして自殺する職員が出かねないということをお話ししています。
さて、自分が所属する組織にもしそういった問題がある場合は、社員は自分を守るためにどのような行動をとれるのでしょうか? 唯一思いつくのが「内部告発」だと思いますので、解説します。コンプライアンスが強化された結果、多くの組織で公益通報制度が整いつつあります。
ここであまり知られていない問題があります。それは公益通報制度は基本的に小さな悪についてしか機能しない制度だということです。上司からのセクハラやパワハラはこの制度が比較的きちんと機能して、通報すると人事部や法務部が動いてくれて、ちゃんとした会社の場合、上司に何らかの処分が下り、再発が禁止されます。
「会社が消滅するかもしれない」内部通報は機能するか
一方で読者の皆さんにも想像していただきたいのですが、仮に皆さんが「それが明るみに出たら会社が消滅するかもしれない」レベルの内部通報をしたら会社の対応は果たして同じになるでしょうか? 企業が内部告発よりも組織全体を守ることを優先した事例を私はいくつも知っていますが、結論を言うと同じにはなりません。告発者が何らかの形で”消されて”しまいます。
では告発者は手詰まりかというとそうでもありません。内部告発にはもうひとつ手段があります。メディアへの告発です。それも新聞のような伝統的メディア以外が選ばれます。この問題は公益性があると考えてくれたジャーナリストが記事にしてくれる可能性が高いからです。ジャニー喜多川問題を取り上げてくれたのはイギリスのBBCでした。
これで企業不祥事入門の解説が一巡したことにお気づきでしょうか。
小さな事件であれば、2023年に起きた事件はすでに報道し尽くされています。それが今になって週刊文春を通じて浮上した。フジテレビ社長の会見はなぜか歯切れが悪い。教科書に書かれているとおりの事態が起きているように見えるのが今回の事案の特徴です。以上で企業不祥事についての基礎の解説を終わらせていただきます。
鈴木 貴博:経済評論家、百年コンサルティング代表
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