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欧州にバチカン市国より「小さな国」設立の可能性 アルバニア首相が「新国」設立を国連総会で発表

東洋経済オンライン / 2025年1月19日 14時0分

センターの入り口には、アルバニアの赤い国旗とベクタシ教団のシンボルが並べて掲げられている(写真:筆者撮影)

2024年9月21日 。東南ヨーロッパにある四国の1.5倍ほどしかない小さな国、アルバニアに激震が走った。首相が「バチカン市国を参考に、イスラム神秘主義の一派であるベクタシ教団の主権国家を設立する」と国連総会で発表したからだ。

この宣言は、市民や多くの宗教団体にとって寝耳に水。もしこの提案が承認されれば、世界一小さい国はバチカン市国から更新されることになる。

だが、本当にこの計画は実現するのか。新国家の中心地「ベクタシワールドセンター」の様子を、世界100カ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員、草薙由莉が取材した。

「ベクタシ教団」の本拠地、アルバニア

そもそも、この新国家の主権者といわれる「ベクタシ教団(Bektashism)」とは、イスラム教シーア派の分派であると一般に説明されている、神秘主義教団である。しかし、その教義を見てみると、キリスト教や土着信仰からも影響を受けている。

【写真でみる】“新国家”の本拠地となるベクタシワールドセンター

例えば、彼らはキリスト教と同様に告解(罪の告白)の習慣を持つのと同時に、死後の魂は再び現世に転生すると信じている。それゆえに、アルバニア国内の多数派であるスンニ派ムスリムからは、イスラム教徒ではないと見なされることも多い。

教団の歴史はとても複雑で、その起源は1248年のオスマン帝国にまで遡る。指導者たちはたびたび宗教弾圧の憂き目にあい、エジプトやアルバニアなどへの亡命を余儀なくされた。

しかし、逆境の中でその教えはだんだんと広まり、今では全世界におよそ700万人の信者がいるといわれている。そして、その信者のほとんどがここアルバニアに集結している。

ベクタシ教団の中心地であるアルバニアは、バルカン半島に位置している小国だ。国の東側は山岳地帯であり、西側はアドリア海に面している。アドリア海の対岸にあるのがイタリアだ。

アルバニアは文化的にもイタリアの影響を深く受けており、今回の新国家建設もバチカン市国を参考にして提案されたものだ。

ヨーロッパで唯一のイスラム国家

またアルバニアは、約400年間にわたってオスマン帝国に支配されてきた。その影響により、アルバニアの人口の56.9%がムスリム(主にスンニ派)である。キリスト教が多数派であるヨーロッパの中で唯一、アルバニアだけがイスラム協力機構の加盟国である。

この激動の歴史の中で、アルバニアはさまざまな文化を包摂してきた。この国を歩いていると、なにか「文化のパッチワーク」と呼びたくなるような、独特な雰囲気を感じることがある。

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