大河「べらぼう」に続「虎に翼」を期待する理由 朝ドラ好きで大河が苦手な私の感じた魅力
東洋経済オンライン / 2025年1月19日 9時0分
私(58歳)が想起したのは、若い頃の水谷豊である。NHK『男たちの旅路』などで、過剰な役作りをせず、高い「芸能運動神経」を素のまま活かしたスピード感のある演技が忘れられない。
今回の『べらぼう』でも、「令和の水谷豊」が躍動してくれれば、こちらも、新しい大河のあり方につながっていく。欲を言えば、もっと軽薄でいいし、もっと走って飛んで跳ねてほしいと思う。
小芝風花の放つ存在感
そして花魁「花の井」役・小芝風花の存在感にも注目である。私たち「朝ドラ党」の中で、朝ドラヒロインが強く望まれている俳優の1人。関西出身、関西弁も完璧。NHK大阪制作での主演をお願いしたいところだ。
小芝風花といえば、何といっても2年前のテレビ朝日『波よ聞いてくれ』である。ひょんなことからラジオDJになる鼓田ミナレ役で、高い「芸能IQ」を全身からまき散らすような、はちきれぶりを見せた。
今回の役は、売れっ子花魁ということで、はちきれてばかりもいられなさそうだが、それでも安定的な花魁詞(ことば)や、第2回「男色」の平賀源内(安田顕)に向けて、男の着物を着て「べらぼうめ!」とたんかを切った姿にはしびれた。
「芸能運動神経」vs「芸能IQ」――横浜流星との活きのいいコラボレーションを期待する。
だが、もっとも興味を惹いたのは、吉原を舞台とするという「英断」である。この「英断」が世の中的に成功するのか失敗するのか、はたまた炎上していくのか、今のところわからない。
すでに初回、着物をはぎ取られた全裸の女郎4人の遺体が映し出されていたことについて、SNS上で賛否の意見が沸騰した(註:インティマシー・コーディネーターを採用しているとのこと)。
しかし「全裸の女性を映すこと」、ひいては「吉原を舞台とすること」の是非以上に、私が興味を抱くのは、それらを通じて、この大河が何をメッセージするかの一点に尽きる。
そのメッセージの質こそが、『べらぼう』を本質的に新しい大河にするかどうかを決定すると考えるからだ。
『べらぼう』の脚本家が語っていること
『NHK大河ドラマ・ガイド べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 前編』(NHK出版)の出演者インタビューから、いくつか言葉を拾う。まずは小芝風花。
――初めて台本を読んだとき、男性にとっては華やかな夢の世界である吉原に暮らす女郎が、本心を隠しながら生きる描写に涙が出そうになりました。
続いて大奥の筆頭老女「高岳」役・冨永愛。
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