大河「べらぼう」描く"性風俗メディア"何が凄い? "蔦重"が仕掛けた広告・マーケティングの中身
東洋経済オンライン / 2025年1月19日 12時0分
年始からスタートしたNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』が「江戸のメディア王」と呼ばれた蔦屋重三郎(以降、蔦重)の生涯をテーマにしたことが注目を集めている。
一般的に見ると、蔦重は無名と言ってもいい人物で、国民的ドラマの主役として取り上げられるのは珍しいことだ。
しかし、筆者としては、蔦重は現代日本において重要な人物であるし、彼が生きた江戸中後期も注目すべき時代だと考えており、本作には期待している。
蔦重は現代日本にもつながる大衆文化をプロデュースしたのみならず、筆者の専門である、広告・マーケティングにも深く関係している。加えて、この時代は非常に面白く、蔦重に関わる同時代の人物が行ったことは、現代から見ても非常に興味深いところがある。
1月12日放映の第2回「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸』」では、「吉原細見」という案内本と、平賀源内というマルチな才能を持つ文化人が登場した。
「吉原細見」がベストセラーとなった必然
蔦重は、遊廓街である吉原の入口近くに書店を開業するが、そこで販売したのが「吉原細見」という、現代でいえば、吉原遊廓のガイドブック、あるいは情報誌のような出版物だった。
その歴史は古く、江戸時代初期の貞享年間(1684〜1688)頃にはすでに流通していたといい、春と秋の年2回刊行されていた。
これを蔦重が大胆にリニューアルしていくのだが、その内容についてはドラマで描かれていくのでここでは割愛する。
本書には、遊廓の場所や地図、遊女の源氏名、等級や揚げ代(料金)だけでなく、遊女の人気ランキング、イベントの開催日まで記載されていたという。まさに、現代の観光ガイドブックや風俗情報メディアをほうふつさせるような内容だ。
こうしたガイドブックが発達した背景には、江戸の人口構成と、吉原が置かれた状況がある。当時、すなわち18世紀半ばの江戸の人口は、100万人を超えていた。世界最多の人口を擁する都市だったとも言われている。
また、当時の吉原は約3000人もの遊女を擁していた。
多くの需要があり、それに応じた供給が存在した。さらに、需要側には多種多様な嗜好とニーズがある一方で、共有側のサービスの質は標準化されていない。需要側と供給側の情報のマッチングへのニーズが必然的に生じてくる。
さらに、高額のサービスであるだけに利用者は失敗したくないから、事前に十分な情報を得ておきたいという強いニーズが生まれる。
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