ニデックの"敵対的TOB"次は牧野フライスに触手 永守氏の野望は「世界一の工作機械メーカー」
東洋経済オンライン / 2025年1月20日 11時30分
また牧野フライスは、ニデックが持たない放電加工機も得意とする。刃物でなく電気エネルギーで対象物を削る機械で、硬い素材などの加工に使われる。
ニデックは2030年の工作機械事業の売上高目標6000億円を掲げており、いずれも達成に向けて強化したい製品群だろう。
PBRは1倍割れが常態化
ただ業界内でのブランド力の割には、牧野フライスの株式市場での評価は芳しくなかった。時価総額は2024年12月26日時点で1929億円と、同3570億円のDMG森精機、同2183億円のオークマの後塵を拝していた。
ニデックはTOBの予告と同時に、牧野フライスの取締役会に宛てた「経営統合に関する意向表明書」を公表。その中で「PBR(株価純資産倍率)は0.84倍(2024年12月26日現在)となっており、資本市場で十分に評価を得られているとは言い難い」と指摘した。
そのうえで「製品ラインナップの補完のみならず、(歯車加工などの)複合加工を実現する技術・ノウハウやソフトウェア開発の面で専門的な知見を共有できる。このアドバンテージを有効活用し、新製品・ソリューション開発をスピードアップすることで、激しくなる競争環境の中で貴社の事業をより強固にする」と買収の受け入れを求めた。
ある工作機械メーカー幹部は「ニデックが次の買収先を探しているのは周知の事実だったが、業績が堅調な牧野フライスを狙うとは驚いた。業界再編がさらに進むのでは」と警戒する。
懸念されるのは、両社の社風の違いだ。ニデックは2030年度の売上高10兆円を掲げるなど、高い目標を公言して突き進む「猛烈企業」として知られる。
一方、牧野フライスは業績の計画を控えめに開示することが多く、どちらかといえば目立つのを嫌う職人肌の集団。実際、ある同社社員は「文化が違いすぎて、すんなりと一緒になれるかは微妙に感じる」と話す。
TOB開始は4月4日と予告
ニデックは牧野フライス側に「適切に判断するため」の期間を設けるとし、TOBの開始を今年4月4日からと予告する。ただ、延期を求められても基本的には応じないと明言しており、同意を得られなくても買収に突き進む姿勢だ。
一方、牧野フライス側の特別委員会は1月15日、買い付けの開始日を今年5月9日に延期するよう求める書面をニデックへ送った。その理由を「株主が2025年3月期の決算を踏まえて本件の是非を熟慮するため」と記した。
さらに事前の打診すらなかった点を「大変遺憾ながら、通常のプラクティスを逸脱した不誠実な手法といわざるを得ない」と批判。完全子会社化が目的ならば、TOBの下限をニデック側が示した議決権の50%から3分の2に引き上げることも要望した。
牧野フライスの株価は買収提案の発表直後にストップ高となり、その後もTOB価格の1万1000円を超える水準で取引されている。ニデックは今回のTOBで工作機械のトップ層に躍り出るのか。2025年の工作機械業界は、再編をめぐり波乱含みだ。
石川 陽一:東洋経済 記者
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
ランキング
-
1「共通テスト国語」東大生から"疑問噴出"の中身 これって国語の試験?新たに追加された第3問
東洋経済オンライン / 2025年1月20日 13時10分
-
2フジテレビへのCM放映を見合わせ企業が25社超に 中居正広さんと女性のトラブルめぐり
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月20日 15時38分
-
3Windows 10サポート終了で迫るリスク "AI対応PC"への転換点となるか
東洋経済オンライン / 2025年1月17日 9時30分
-
4突然、中指を立てて…来日中の米ブリンケン国務長官に暴言を吐いた豊洲市場スタッフが“出禁”になっていた
NEWSポストセブン / 2025年1月20日 16時15分
-
5海外記者が見た「日本の中居報道」に潜む異常さ サルを追いかけるのにはヘリコプター使うのに
東洋経済オンライン / 2025年1月20日 8時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください