"もう1つの旧ビッグモーター"が歩む哀れな末路 事業再生ばかりに注力、補償手続きは二の次
東洋経済オンライン / 2025年1月20日 7時30分
相次ぐ法令違反の発覚や内需の縮小によって転換点に立たされている損保・生保業界。『週刊東洋経済』1月25日号の第1特集は「保険 異常事態」だ。悪しき慣習から脱却し本当に変革できるのか。業界大手トップへのインタビューをはじめとして、業界の最新動向に迫った。
「彼らは、突然寝転がったような対応をしてみたり、時間切れで自然消滅させようとしてみたり、そんな姿勢が見え隠れする部分があって、本当に疲れる」
【図解】WECARSだけじゃない!旧ビッグモーターの会社分割スキーム
大手損害保険会社の幹部が深いため息をつきながら話す「彼ら」とは、旧ビッグモーター(BM)を前身とするBALM(東京都港区、和泉伸二社長)のことだ。
BALMは旧BMを分割した際に、いわゆる「バッドカンパニー」として、保険金不正請求事案などの債務を引き継いだ会社だ。被害回復に向けた補償手続きを担っており、2024年3月にスポンサーとなった企業再生ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)が実務を取り仕切っている。
補償手続きは遅々として進まず
JWPは、旧BMの事業用資産を引き継いだWECARS(ウィーカーズ)に対しても、特別目的会社(SPC)などを通じて伊藤忠商事などと共同で出資しており、いわば実質的な親会社でもある。
昨年5月には、伊藤忠商事と共に記者会見を開いて、旧BMの事業を引き継ぐ会社としてWECARSが新たに発足したことを大々的に発表し、再生への一歩を踏み出したことを盛んにアピールしていた。
ところが、その華々しさとは裏腹に、BALMにおける補償手続きは遅々として進まず、債権を持つ損保各社や取引銀行をいらつかせている。
「BALMは自動車修理の板金業務や保険金の協定手続きの知識がない人間ばかりで、当初はまともな対話にならず、頭を抱えた」(大手損保幹部)という。
不意打ちの法的整理
WECARSでの事業再生ばかかりにリソースを割き、BALMにおける補償手続きは二の次といった姿勢がにじむ中で、損保各社との間で昨夏以降、2つの“事件”が起きた。
1つは昨年7月の、不正請求をめぐる全件調査をBALMとして断念するという、一方的な通知だ。
旧BMで不正請求が発覚してから2年以上にわたって全件調査を求め、旧BMの経営陣や顧問弁護士らと粘り強く交渉してきた損保各社にとって、その通知は到底受け入れられるものではなかった。
損保各社が一斉に反発し、改めて協議を重ねる中で起きた2つ目の事件が、昨年12月の民事再生法の適用申請だった。
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