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できる人ほど「仕事の道具選び」に妥協しない理由 「よい道具」は使い続けることで進化していく

東洋経済オンライン / 2025年1月21日 18時0分

友人が通う稽古場では、馴染みの筆屋さんが訪れて、これらの基本を備えたよい筆を勧めてくれるそうです。しかし、その中からさらに「これ」という毛先のものを選んでも、以前に使ってよかった筆と同じように見える筆を選んでも、実際には使ってみないとその特性は分からないのだとか。

このことから、筆を選ぶのがいかに難しく、また道具と使う人との相性がどれほど重要か、がよくわかります。実際に使って対話することが大切なのです。

道具は成長する

興味深いのは、筆を選んだ後の育て方です。毎日書を書いて使いこむことで、筆は書き手と馴染んでいき、まさに「自分だけの筆」へと変化していくのだそうです。

友人の経験によると、新しい筆には独特の「成長過程」があるようです。最初のうちは、穂先の毛の量が多いため、使いにくい点がいくつかあります。たとえば、墨を必要以上に含みやすく文字がにじみやすいことや、余計な細い線が出やすいことがあるそうです。

しかし、使い込んでいくうちに興味深い変化が起きます。毛先が適度に摩耗して筆の芯の毛だけが残ってくると、むしろ書きやすくなるのだそうです。

これは、余分な毛が取れることで墨を適量含むようになり、同時に穂先が跳ねすぎなくなって不要な細い線も出にくくなるからです。

この変化によって、筆は次第に扱いやすくなっていくのです。このように「自分の筆」になった筆は、何年も手入れして大事に使い続けているといいます。

道具と関係をつくることは、技術を向上させるためにも、感性を磨き上げるためにも重要です。

みなさんは仕事でどんな道具を使っていますか? オフィスワーカーの方も、マウス、キーボード、デスクチェア、スーツ、鞄……。欠かせない道具があると思います。

日本文化の道具を大切にする考え方に学びながら、道具の選び方、道具との付き合い方を見直すと見える景色も変わるかもしれません。

梅澤 さやか:カルチャーマーケティング・コンサルタント

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