消える「伝統的気動車」ハイブリッドに交代の背景 メンテナンス性向上、「税制面の優遇」も利点?
東洋経済オンライン / 2025年1月21日 6時30分
ハイブリッド気動車や電気式気動車の利点の1つは、モーターで走るため電車と機器を共通化できることだ。従来型のディーゼルカーは「液体式」と呼ばれ、車体の床下に積んだエンジンの回転力を「液体変速機」で調整し、推進軸を通じて車軸に伝えるが、これらのメンテナンスは手間がかかる。気動車より電車のほうが両数が多い鉄道会社であれば、多いほうに合わせることができ、手間やコストの削減につながる。
また、従来型の気動車に比べて環境性能に優れているとされる。例えばJR東海のHC85系は従来型のキハ85系に比べて燃費が約35%向上しており、これに加えて燃料噴射量などを細かく制御する仕組みの採用で排出する二酸化炭素を約30%、窒素酸化物を約40%削減しているという。
バッテリーを搭載しない電気式でも、JR東日本のGV-E400系は「当社で主力の(従来型気動車)キハ110系と比べ、エンジン単体で窒素酸化物(NOx)を約6割、黒煙などの粒状物質(PM)を約8割減らせる」という(2020年9月21日付記事『地方を強く、JR東日本「ローカル線戦略」の全貌』)。
このような点から、実は税制面でも優遇措置が設けられている。
国土交通省鉄道局は、鉄道局関連税制として環境関連税制をウェブサイトで公開している。例えば「低炭素化等に資する旅客用新規鉄道車両」(特急用車両などを除く)について、用件を満たせば取得後5年間、固定資産税の課税標準を5分の3(中小事業者以外は3分の2)に軽減するという特例措置がある。
この要件は、旧型車両を代替する場合であれば「1:一定の要件を満たすVVVFインバータ制御装置と、2:電力回生ブレーキの双方(気動車にあっては1のみ)」とされている。VVVFインバータ制御装置は現在の電車で主流のシステムで、従来型気動車にはないがモーターで走るハイブリッド式や電気式の気動車はこれを搭載している。
【写真】JR東日本は水素燃料電池とバッテリーを使う「水素ハイブリッド電車」も試験中。青い車体が目印のFV-E991系「HYBARI(ひばり)」
また、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」でも鉄道車両が対象となっている。二酸化炭素排出量を削減した車両を導入した場合、炭素生産性が3年以内に10%以上向上すれば税額控除10%または特別償却50%、7%以上向上すれば税額控除5%または特別償却50%となる。この中にハイブリッド車両も入っている。
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