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会社擁護で炎上「フジ男性アナ」に私が同情する訳 注意不足だが、彼も今回の騒動に巻き込まれた側だ

東洋経済オンライン / 2025年1月21日 17時40分

しかしながら、発言者ごとにネットニュースや切り抜き動画にされて、急激に拡散する現代社会において、全体の流れは軽視される。

番組構成上は「社員3人の発言でセットだ」と考え、リアルタイムでの視聴者には伝わっていたとしても、ネット空間にその意図が波及するのは容易ではない。

「楽しさ」の代償として生まれた「軽薄さ」

また、求められる職能が異なっていた可能性もある。

酒主アナはこれまで、スポーツキャスターや実況の経験が多く、感情に訴えるスキルを求められてきたのではないか。報道番組や情報番組では、リポーターやスポーツキャスターを担当しているが、みずからの意見を話す機会は、あまりなかったのかもしれない。

とはいえ視聴者は、担当が報道でも、バラエティーでも、スポーツでも関係なく、「フジテレビのアナウンサー」として評価する。いい時でも悪い時でも、看板として放送局を背負わなければならないのが、アナウンサーの宿命なのだ。

ましてや、中居さんの問題をめぐっては「説明が不十分だ」と思われているフジテレビだ。今回のような重大事案への言及では、制作スタッフとともに、「どういうメッセージを与えるか」を慎重に考えてから、放送に臨むべきだっただろう。

いまフジテレビに問われているのは、「『楽しさ』の代償として生まれた『軽薄さ』」だ。フジは1980年代に「楽しくなければテレビじゃない」を掲げ、バラエティー番組を中心に大躍進した。

しかし40年近い月日の中で、視聴者のニーズは多様化していった。いまやネット配信にも「楽しい」コンテンツがあふれている。

彼もまた、今回の騒動に巻き込まれた側である

フジテレビのバラエティー番組といえば、出演者やスタッフの「内輪ノリ」が特徴だった。制作陣の共犯関係を、視聴者にも広げることで、予定調和による「お約束」の楽しさを演出するスタイルが、視聴者にウケていた過去は確かにあった。

しかし、番組制作の原動力となった「ノリの良さ」は、コンプライアンス意識の高まりや、マスメディア批判の中で、ネガティブな「軽薄さ」へと認識が変わっていった。そして、ジャニーズの性加害問題により、あらゆる事柄で人権尊重が前提となったことで、認識は固定化した。

そうした視聴者の印象があるため、酒主アナの発言は、残念ながら「軽薄さの上塗り」と認識されている。SNS上では、彼を「フジテレビ腐敗の象徴」のように扱い、攻撃する投稿が絶えない。

ただ、繰り返すが、酒主アナもまた、今回の騒動に巻き込まれた側であることを忘れてはならない。

目立った1人だけをバッシングしても、物事の本質は変わらない。むしろ「身代わりができた」と、ほくそ笑んでいる人物がいるかもしれない。そうした疑念を持たれないためにも、一刻も早くフジテレビは「企業としての情報公開の場」を設けなくてはならない。

【もっと読む】フジ「相次ぐCM出稿停止」よりキツい最悪の展開 不信感が募れば、視聴者もスポンサーも去るだけだ では、CM出稿停止が続くフジテレビに今後起こりうる"最悪の展開"について、コラムニストの城戸譲氏が詳しく解説している。

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城戸 譲:ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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