1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「風邪に対する特効薬」が発明されない納得理由 症状は抑えられてもウイルス退治はできない

東洋経済オンライン / 2025年1月22日 16時0分

(写真:Graphs/PIXTA)

「熱が出たから風邪薬か解熱剤を飲もう」「便秘で苦しいときには下剤を飲まないと」など、体調が悪くなると手っ取り早く薬に頼る人が少なくありません。ただ、薬は症状を緩和する効果がある一方で、副作用による悪影響を体に与えてしまうものです。そんな薬の飲み方や副作用にいたるまでをわかりやすく解説した薬剤師の鈴木素邦さんの著書『その一錠があなたの寿命を縮める 薬の裏側』より一部抜粋・再構成してお届けします。

世の中に「風邪を退治できる薬」は存在しない

風邪をひくと、医療機関に行こうとされる方が多いのですが、実は、風邪を退治できる薬は存在しません。まず簡単に、「風邪」について説明しましょう。風邪の原因の80〜90%は、ウイルスの感染によって引き起こされます。一般的に風邪の症状を引き起こすウイルスの種類は200種類を超えます。これだけ種類が多いウイルスのある種類に効く、薬を開発するのは、ほぼ不可能です。

【画像でわかる】抗生物質は微生物であるウイルスには効かない

薬を開発するためのターゲットのウイルスを見極めるだけでも、膨大な時間がかかりますし、せっかく薬を開発しても、そのウイルスがもはや存在しない、なんてこともあります。

新型コロナウイルスのパンデミックで、多くの新薬が開発されましたが、その多くは実際に市販されずに開発が断念されたものが数多くあります。その理由は、ウイルスの変異の速さと種類の多さです。それに薬の開発が対応できないのです。

また風邪に対して、抗生物質を処方する医師もいますが、前述したとおり、風邪の8〜9割はウイルスによる感染です。抗生物質は、細胞を持つ細菌には効きますが、それよりも数百分の1程度しかない小さい微生物であるウイルスには効きません。だから、風邪に対する特効薬は存在せず、そのことを知っている薬剤師は医療機関に行かないという選択をする人も少なくないのです。

風邪の症状に対応する薬は存在する

ちなみに、解熱剤や咳止め薬など風邪の症状に対応する薬はあります。薬では症状を抑えることしかできませんが、症状を抑えることが、逆効果を生むこともあります。風邪の症状の感染の状況をちょっと見てみましょう。

まず、風邪のような症状を持つ人のくしゃみなどで、飛び散ったウイルスや細菌などが、粘膜の中で悪さをして、発熱、鼻水・鼻詰まり・くしゃみ、喉の痛み、身体中のダルさ、頭痛症状などを引き起こします。

なお、一般的な風邪症状は、鼻水・鼻詰まりが95%、咳が80%、喉の痛みが70%程度で起こります。しかし、鼻の症状がなく、「咳だけ」「喉の痛みだけ」が突出して強い場合は、風邪ではなく、緊急性が高い病気、例えば、肺炎など細菌性感染症である可能性があるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。ウイルスなどの悪さに対して、私たちの身体は免疫細胞が働きシグナルを全身に送りします。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください