物価上昇きついのに「デフレ脱却宣言」出ない理由 2001年に政府が発表してからいまだ脱却できず
東洋経済オンライン / 2025年1月22日 9時40分
つまりGDPデフレーターは、物価の上昇を表すものなのです。消費者物価(生鮮食品を除く総合)との違いについては、GDPデフレーターは国内で生産されたモノすべてを網羅して平均的な物価の上昇を計算するものです。内閣府のウェブサイトから簡単に取得できますが、下図に示されるように、直近発表となる2024年7~9月期まで8四半期連続で前年比プラスとなっています。GDPデフレーターからも物価が“持続的”に上昇していることがわかります。
次に、(2) 単位当たり労働費用は、企業が製品を作るのに必要となる賃金を表します。雇用者報酬を実質GDPで割ることで求められるものです。単位当たり労働費用が上昇すると、製品を作るための賃金が上がるので、“賃金上昇を伴う物価上昇”への圧力が期待できます。足元は前年比ベースでプラス傾向が見られます。
ここまで説明した指標は、いずれも足元の状況はデフレから脱してきていることを示すものでした。しかし最後のわが国の総需要と供給力との差を捉える(3)GDPギャップはそうではありません。企業などが保有する設備を、労働者が動かすことで製品が作られますが、国内の設備や労働力には限りがあります。
その限界を超えず巡航速度で生産できる量が国内の供給力です。人々が製品を買いたいという需要が供給力を上回ればGDPギャップはプラスとなります。この場合には物価が上昇する方向に向かうのですが、上図の丸印に示されるようにGDPギャップはマイナス傾向が続いています。
政府は消費者物価(生鮮食品を除く総合)を含めてこれらの4指標の改善から単純に“デフレ脱却”を判断するわけではないとしています。ただ、少なくともGDPギャップのマイナス状況では“再びデフレに戻る見込みがない”と判断はできずにデフレ脱却宣言は難しいと見られます。
昨年12月の経済財政諮問会議で、政府は2025年度のGDPギャップは0.4%のプラス転換との試算を示しました。少子高齢化による人手不足などから供給が絞られることが主な理由と説明されています。
また、昨年7月の政府の「年央試算」では、2025年度の消費者物価が2.2%(前年比)、GDPデフレーターは1.6%(前年比)と公表されています。依然、足元では物価上昇に賃金の伸びが追いつかない状況ですが、2025年の春闘に向けて、労働組合から高い賃上げ要求が相次いで発表されています。
日本労働組合総連合会(連合)は、2025年春闘の賃金要求方針について、全体では「定期昇給分を含め5%以上」とすると公表しました。このような賃金の上昇を伴う緩やかな物価上昇が期待されるなかで、2025年はデフレ脱却宣言に向けた環境は整ってくるでしょう。
2025年中はデフレ脱却宣言が難しい
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