「人手不足だから賃上げ」が中小は望み薄の現実 AIで統計の落とし穴を補って分析してみた結果
東洋経済オンライン / 2025年1月23日 8時0分
雇用関連については、選んだ根拠として、(1)求人数の動き、(2)求職者数の動き、(3)採用者数の動き、(4)雇用形態の様子、(5)周辺企業の様子、(6)それ以外、から根拠を選ぶ。
このような調査方法では、雇用市場が「タイトなのか?ルーズなのか?」という判断は難しい。
雇用関連業種の景気判断=雇用需給、ではない
例えば、2024年12月調査でも「求人数が減少している」として景気がやや悪くなっているとした回答があった一方で、「求職者数が前年比では減少傾向にある」という理由で景気がやや悪くなっているとした回答もあった。
しかし、求人数が減少していることについては、雇用市場をルーズにしている(賃金が上がりにくい)要因であり、求職者数が減少していることについては、雇用市場をタイトにしている(賃金が上がりやすい)要因と考えることができるため、雇用需給という観点からは逆方向の動きである。景気ウォッチャー調査ではこれらが無差別になってしまっていると言える。
その結果、景気ウォッチャー調査の雇用関連DIは、就職件数と連動する統計になっている。
求人と求職の変化によってマッチングがどの程度生じているのかという情報も重要だが、やはり雇用市場の需給バランスが捉えられている統計ではない。
そこで、筆者らは景気ウォッチャー調査に示されている判断コメントのほうに注目した。前述の例で言えば、「求人数が減少している」は雇用需給が「ルーズ」になっていることを示すコメントであり、「求職者数が前年比では減少傾向にある」は雇用需給が「タイト」になっていると再定義できる。
具体的には、2010年1月~12月のコメント(1891件)に対しChatGPTを使って「タイト」「ルーズ」「その他」のラベリングを行った。ラベリングされたコメントを学習データとし、2011年以降のコメントを機械学習によって分類したうえで、2010年1月以降の雇用関連業種のコメントを「タイト」を100ポイント、「ルーズ」を0ポイント、「その他」を50ポイントとして月ごとの平均値を「AI雇用需給DI」として作成した。
結果は図に示した通りである。
2017年後半にかけて「AI雇用需給DI」は上昇していたことから、景気ウォッチャーは労働市場がタイト化していたと判断していたが、その後は低迷していることがわかる。コロナ後も水準はほとんど変わらず、低位安定といえる状況が続いていることがわかった。
「低位安定」は有効求人倍率と似ている
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