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「創造的破壊」が資本主義を破壊してしまう「逆説」 「イノベーション理論の父」シュンペーター予言

東洋経済オンライン / 2025年1月24日 16時0分

本来、家族をもつとか、子供を育てるとか、親の面倒をみるとかいったことは、情愛に基づく行為であり、金銭的な見返りを求めてやるものではない。

しかし、合理主義の精神に支配された資本主義社会では、情愛などという、非経済合理的な価値観は、尊重されないのである。

こうして、資本主義は、合理主義の精神が浸透することで発展するが、その代償として、人々は、子供をもたない、あるいは一人しかもたないという傾向を強めていく。

だから、資本主義の発展過程では、少子化が進むというのだ。

それでは、どうして、少子化が進むと、資本主義は崩壊するというのだろうか。

今日、「少子化で人口が減少して、経済が成長しなくなる」とか「社会保障の負担が大きくなる」とかいった議論がされている。

しかし、シュンペーターは、もっと深く考察を巡らしていた。

彼は、次のように論じたのである。

資本主義において、実業家の行動の動機は、利潤の追求である。

ただし、シュンペーターは、実業家たちを利潤の追求に駆り立てていた動機は、彼らの家族にあったと述べている。

つまり、実業家たちは、自分の子や孫たちに財産を残してやりたいという動機から、利潤を追い求めて、投資や貯蓄を行っていたというのである。そのような動機を、シュンペーターは「家族動機」と呼んでいる。

子や孫の将来のためを考えて行動するということは、自分の一生より長いタイムスパンでものごとを考え、行動するということを意味する。

したがって、家族動機に駆り立てられた実業家たちは、自ずと、より長期的な視野に立って、投資をしたり、貯蓄をしたりする。

自分が生きている間には利益を生まないかもしれないが、20年後、30年後には利益を生むような事業に投資をして、自分の子や孫がその利益を得られるようにしておこうと考えるのだ。

こうして、資本主義は、長期的な視点からの投資を得て、発展する。

家族動機は、資本主義の発展の原動力だったのである。

「コスパ」「タイパ」がもたらす経済停滞

ところが、先ほど述べたように、資本主義が発展して、合理主義の精神が浸透するようになると、人々は、家族をもつことや子供を複数もつことをやめるようになる。

そうなると、実業家たちから家族動機が失われることになる。

家族をもたない合理主義的な個人は、自分が生きている間の利益のことだけ考えていればよい。自分が死んだ後のことなど、何の関心もない。

そうすると、自分の残りの人生より先の将来のために、今の生活を犠牲にして行動しようとはしなくなる。

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