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金融庁監督局長が指摘する保険業界の深刻な病巣 「悪しき慣習から脱し商品の差別化で競い合え」

東洋経済オンライン / 2025年1月24日 8時0分

伊藤 豊(いとう・ゆたか)/金融庁監督局長。1989年東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。大蔵省銀行局、財務省秘書課長、金融庁総合政策局審議官などを経て、2022年6月から現職(撮影:梅谷秀司)

相次ぐ法令違反の発覚や内需の縮小によって転換点に立たされている損保・生保業界。『週刊東洋経済』1月25日号の第1特集は「保険 異常事態」だ。悪しき慣習から脱却し本当に変革できるのか。業界大手トップへのインタビューをはじめとして、業界の最新動向に迫った。本記事では、金融庁の伊藤監督局長に、不祥事が後を絶たない保険業界の根本的な問題点について聞いた。

差別化の余地はいくらでもある

──損害保険業界で不正問題が続発する背景や構造要因について、監督官庁としてどう捉えていますか。

トップライン重視の経営やコンプライアンス(法令順守)意識の欠如、顧客軽視の姿勢などが複合的に絡み合って起きている問題だ。また業界の慣習として、競争が商品の差別化ではなく、乗り合い代理店への便宜供与などに向かってしまっていたこともある。

──商品の差別化については、そもそも保険商品は金融庁の認可制であり、すぐ他社にキャッチアップされやすい仕組みになっているため難しいという声を、保険会社からよく聞きます。

保険の自由化前に同一商品、同一価格で提供していたことの影響なのか、楽をしようと考えているのかよくわからないが、商品を差別化できないと思い込んでいるのではないか。

商品だけでなく、付随するサービスやアフターフォローなどを総合して価値を提供するのが、保険会社の役割だ。差別化の余地はいくらでもある。保険以外の便宜供与で勝負するのであれば、もはやそれは保険会社ではない。

代理店から「その保険をぜひ売らしてくれ」と言われるぐらいの優位性のある商品を開発してみてほしいが、そういう気概はなく、時に便宜供与に熱を上げ、果ては保険金の不正請求を見逃すという事態まで起きた。

大規模な乗り合い代理店の歓心を買う商売のやり方をしたからこそ、保険料のカルテルにつながっていった面もある。

われわれが設置した有識者会議や金融審議会でもさんざん議論したが、そうした保険会社と代理店のもたれ合いの構図が、代理店の自立やリスク管理能力の高度化を阻害していた部分もある。業界全体がそうした悪循環に陥っているのではないか。徹底的に意識改革をして変わってもらわなければ、またぞろ元に戻るリスクがある。

モニタリング部隊を増員

──監督責任がある金融庁としては、モニタリングをどう見直していきますか。

大規模な乗り合い代理店に対するモニタリングを強化する。保険会社には代理店を指導・監督することが求められるが、大規模代理店に対しては取引シェアなどがちらついて、機能しにくくなる側面がある。

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