1億で作った「三田のサグラダファミリア」驚く事態 再開発地区に指定されたことで二転三転…
東洋経済オンライン / 2025年1月25日 7時31分
ちなみに外観は、自由に即興的に作られた内部とは異なり、見え方を考えながらじっくり作り上げられた。
「朝、現場に向かうために坂を下りながら建物を見ると、あそこをもうちょっと勢いよく張り出したいなとか浮かんでくるんです。建物がどう見えるかを考えながらずっと作っていましたね」
トータル1億2000万円の建築
こうして完成へと近づく蟻鱒鳶ル。だが順調にここまで来たわけではない。
建物が立つ一帯では、2009年に再開発の話が持ち上がっていた。その影響で一時は立ち退きを求められ、取り壊しの危機に遭遇。粘り強い交渉や、建物を広く知ってもらうための活動に取り組んできた歴史がある。
2013年には岡さんが取材を受けた「タモリ倶楽部」が放映され、2018年には自著『バベる!自力でビルを建てる男』(筑摩書房)を出版した。
その間も、建設続行か取りやめかで二転三転したが、ようやく再開発の一部として蟻鱒鳶ルを10m後方へ曳家(ひきや:建物を解体せずに移動させる工事)することに落ち着いた。
再開発で両隣のマンションは解体されて更地となった中で、蟻鱒鳶ルは2024年10月に工事の区切りがついた。これから曳家が行われ、2026年に再開発区域一帯が竣工予定だ。
ここに至るまで紆余曲折あった蟻鱒鳶ルだが、コストはどれくらいかかっているのだろうか。
まずは土地代。敷地は港区三田のマンションに挟まれた40平米の狭小地。奥は崖という立地だった。販売価格は建築条件付きで6500万円。岡さんは登記情報を調べ、土地に足を運んだ。競売物件をいくつも見てきた岡さんは、売れない土地であると確信し、値引きの交渉をする。結果、5000万円ほど安い、1550万円で土地を購入した。
土地代を含めた蟻鱒鳶ルのコストは、1億2000万円ほど。岡さんの人件費と手伝いに来た人への支払い、材料費などだ。建築資金のために借金もしている。完成後は、蟻鱒鳶ルを売り、そのうえで賃貸契約を結んで2階以上の住居に住むことも考えている。
コストの大半は岡さんの人件費が占める一方で、材料費は驚くほどかかっていない。
「砂と砂利はトラック1杯分で1万2000円ほど。鉄筋は数カ月に一度、約4万円で買っていました。工事終盤はガラス代がかかりましたが、途中までは砂と砂利、セメント、鉄筋がほとんどです。材料費として月々3万円ぐらいです」
材料費を安く抑えられたとはいえ、価格高騰の影響もあったのではないか。
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