蔦屋重三郎が書店開業!その裏で売れまくった本 恋川春町の「金々先生」いったいどんな作品?
東洋経済オンライン / 2025年1月25日 8時10分
今年の大河ドラマ『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』は横浜流星さんが主演を務めます。今回は蔦屋重三郎が書店経営に乗り出した頃に、大ヒットを飛ばした恋川春町について解説します。
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ついに吉原細見の出版に乗り出した重三郎
江戸時代中期に活躍した出版人・蔦屋重三郎(1750〜1797)。その活動の原点は、20代(1773年)のときの書店開業でした。江戸・吉原の情報誌「吉原細見」の小売りから、彼は書籍に関わる仕事をスタートしたのです。
【写真を見る】「金々先生」がヒットした恋川春町。写真は、恋川春町の墓がある、東京・成覚寺
「吉原細見」は、かつては複数の出版社が刊行していましたが、重三郎が開業したころには、鱗形屋という江戸の老舗出版社が刊行するのみとなっていました。重三郎は、まず、この鱗形屋の系列に入って、活動していくことになります。
さらに書店のみならず、出版社としての仕事を安永3年(1774)から始めた重三郎。遊女の評判記『一目千本』を出版し、翌年には、「吉原細見」である『籬の花』を刊行しました。
これまで、重三郎は「吉原細見」の小売りの立場でしたが、いよいよ同書を出版する立場になったのです。
前述したように「吉原細見」は、鱗形屋の独占販売。鱗形屋の系列に入っていたからといって、駆け出しの出版人である重三郎が、簡単に、その牙城を突き崩せるとは思えません。そこには何か原因があったと考えられます。そのことを見ていく前に、まずは、鱗形屋の動向をつかんでおく必要があるでしょう。
重三郎が初めて「吉原細見」を出版した安永4年(1775)、鱗形屋孫兵衛は『金々先生栄花夢』という書籍(黄表紙と呼ばれる、挿絵入りの読み物)を刊行します。
この作者は、恋川春町(1744〜1789)という人物。「恋川春町」というのは雅号(風雅・風流の考えから、実名以外につける名。今風に言うとペンネームか)であり、本名は倉橋格と言いました。
武士だった恋川春町
春町は、作家が本業だったわけではありません。紀伊田辺藩士・桑島九蔵の次男として生まれたことからもわかるように、武士だったのです。九蔵の子として生を受けた春町ですが、伯父・倉橋勝正の養子となります。勝正は、駿河国小島藩(藩主は滝脇松平家。1万石の小藩)に仕える身でした。よって、春町も小島藩に仕えることになるのです。
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