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テスラが運行、電池式列車「ギガトレイン」の正体 ベルリン工場の専用線に導入、従業員を輸送

東洋経済オンライン / 2025年1月25日 6時30分

なお、テスラ南駅の出入り口がそのまま工場のゲートになっているため、従業員以外は外に出られない。改札外が工場敷地で一般客は出られない日本のJR鶴見線海芝浦駅などと同様だ。

エルクナーに戻る列車には、退勤する従業員の姿が多く見られた。往路は工場関係の施設に目を奪われていたが、復路に列車の逆側を見ると、かつて東ドイツがカムフラージュのために植えた樹木が線路ギリギリまで植わっているのが観察できた。工場用地造成の際に行われたであろう樹木伐採作業はなかなか手こずる作業だったのではないかとしのばれる。

さて、肝心のギガトレインの車両だが、これは残念ながらテスラ製ではない。ドイツのシーメンス製で「ミレオプラスB」(Mireo Plus B)と呼ばれる車両だ。2両編成を2本つないだ4両編成で運用されており、最大500人の収容が可能。バリアフリー設計で、自転車用スペースも備えている。

バッテリーもテスラの乗用車とは異なる。ギガトレインの動力源には、一般的なEVに使用されるリチウムイオン電池(LIB)ではなく、「リチウムチタン酸化物(LTO)電池」が採用されている。

LTO電池はLIBに比べて長寿命・高速充電・安全性の高さに優れる。LIBが高エネルギー密度を誇る一方、LTO電池は1万5,000回以上の充放電に耐え、大量輸送機関に適している。また、高速充電が可能で、駅での短時間の停車中に十分な充電ができる。さらに、熱暴走のリスクが低く、振動や過充電にも強いため、安全性が求められる鉄道に最適とされる。

「ギガトレイン」の今後は?

多くの従業員を抱える自動車工場にとって、通勤は悩みの種といえる。自動車通勤者の増加は温室効果ガスの発生につながり、たとえEVを利用していたとしても周辺地域での渋滞を招きかねない。ギガファクトリーの周辺にはドイツ鉄道の近郊路線が通っているが、駅は工場から離れている。地元メディアなどによると駅を移設する計画もあるが、時期は不明だ。

【写真の続き】一般人は駅の外に出られない「テスラ南駅」。途中の車窓には旧東ドイツ時代に植えられた「目隠し」の林と工場施設が広がる

バッテリー駆動のギガトレインの導入により、年間約50トンの二酸化炭素の排出量削減が見込まれるほか、従業員の移動を効率化し、周辺道路の渋滞緩和にも寄与するという。世界的EVメーカーであるテスラが、工場への通勤手段として温室効果ガスを排出しない列車を運行することは、同社の環境意識を示すとともに、少ないエネルギーで多くの人を時間通り輸送できる鉄道の有用性も示しているといえるだろう。

テスラはEV開発だけでなく持続可能な交通インフラの整備にも取り組んでおり、「持続可能なエネルギーへの移行を加速させる」という理念を掲げている。ギガトレインの運行経験が今後、他地域や国、そして公共交通分野への展開につながる可能性はあるのか。自動車だけでないテスラの動きに注目したい。

さかい もとみ:在英ジャーナリスト

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