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アップルやNVIDIAがトランプに擦り寄らない事情 擦り寄る企業のビジネスモデルとの違いは何か

東洋経済オンライン / 2025年1月25日 12時0分

この時代、彼の教祖的存在だったスチュアート・ブランドをはじめとする対抗文化(カウンターカルチャー)の担い手たちは、政府や体制といった大きな力に対抗するための道具としてパーソナルな、つまり個人のためのコンピューターを生み出した背景がある。もともとは、パソコンは個人の能力拡張と保護をするための道具として誕生した背景がある。

それを広めるのが1970年代のIT企業。これに対して乱暴に言えば、すでにパソコンとインターネットが普及した後、その利用者を「便利」で惹きつけて広告で儲けようとしてきたのが1990年代後半以降のインターネットのビジネスだ。

アプリの審査プロセスにも違い

この違いは徹底してユーザーの体験に責任を持つか、それともコストを下げ量で勝負するかという姿勢の違いにも表れている。

これはアプリ掲載の審査にも見て取れる。多くのインターネットビジネスが収益源としているネット広告やECサイトの販売商品などの審査を半自動化し、その結果として詐欺広告や詐欺まがいの商品が問題となっている。

これに対してアップルは、年間数百万本のアプリを驚くことに人手で審査している。2020年には、隠し機能のあるアプリ4万8000本、スパムや他製品の模倣による15万本、プライバシーを脅かす可能性のあるアプリ21万5000本の掲載を見送った。より多くのアプリを掲載すればその分、収益は増えるにもかかわらず、ユーザーの安全性とプライバシーを優先する判断を続けているのだ。

そんなアップルも政府からの規制圧力と無縁ではない。App StoreがiPhoneへのアプリ供給を独占していることに関して批判があがり、EUと日本ではすでに他社によるアプリ流通が法制化されている。

トランプ政権を含め、アメリカ政府は今のところ、ヨーロッパや日本のようなアプリ代替流通経路の設置を法制化して押し付けるようなことは行なっておらず、アップルとしてもできればこの状態を維持したいところだろう。しかし、だからといってアップルは会社としてトランプ政権に寄付をするようなことはせず距離を保っている。

トランプの要望には臨機応変に対応

第1期トランプ政権は、アップルにアメリカでの雇用を増やすようにアップル製品の製造を国内で行うことを要求した。これに対しても同社はMacの一部モデル(Mac Pro)の製造の一部をアメリカで行う形で対応している。

例え相手が異例ずくめのトランプ大統領であっても、会社としては距離を保ち、何か要求があっても正当な主張を返し、状況に応じて必要な対応を行う。それだけだ。

プライバシー規制によって収益が大きく左右されるという背景を持ち、露骨な政権寄りの姿勢を取る「テック・オリガルヒ」たちの会社と比較するとその差が際立つ。

時価総額トップ企業が本質を見失うことなく、政権と適切な距離を保ち続けている事実は、テクノロジー産業の未来に1つの希望を示している。それは、短期的な利益や規制緩和への期待に基づく「我田引水」的な姿勢ではなく、長期的な視点に立った独立性の維持こそが、結果として企業価値を高める道筋となることを示してほしいと思う。

(敬称略)

林 信行:フリージャーナリスト、コンサルタント

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