日本人なら懐かしい「歌の昭和史」総ざらい(後編) 昭和が遠のく中、矢沢永吉は今も現役で…
東洋経済オンライン / 2025年1月26日 12時2分
これ以降、イルカの『なごり雪』や太田裕美の『木綿のハンカチーフ』など、中央(都市)と地方(田舎)に引き裂かれた恋人たちのラブソングも前時代的となり、やがて姿を消すことになる。
同時代の松山千春や中島みゆきが、日本というよりも、北海道という風土を確かなバックグラウンドとしているのと対照的に、彼らのサウンドは日本を背負わず、無国籍、コスモポリタンなリッチ感覚に彩られている。
大瀧詠一と桑田佳祐の登場
そもそもシティ・ポップは、日本ではなく、むしろ海外での日本再発見という形でブームに火が付いた。
アメリカの模倣に終始していた60年代のポップスの流れに終止符を打ったのは、それ以前に大瀧詠一であり、桑田佳祐であった。
サザンオールターズの最初のヒット曲『勝手にシンドバッド』(昭和53[1978]年)のタイトルは、パロディの名手・阿久悠(拙著『ヒットメーカーの寿命―阿久悠に見る可能性と限界』、東洋経済新報社参照)が作詞を担当した、沢田研二の『勝手にしやがれ』とピンク・レディーの『渚のシンドバッド』の合成パロディだ。桑田による昭和歌謡へのジャンル横断的宣戦布告だった。
一方、大瀧詠一は日本語によるロックを看板に、昭和44(1969)年、細野晴臣、松本隆、鈴木茂と「はっぴいえんど」を結成、フォークとロックのハイブリッドで、後のシティ・ポップの先駆けとなった。
解散後の大瀧のソロアルバム『A LONG VACATION』(昭和56[1981]年)は、1960年代への回帰を不可逆とする80年代初頭の日本ポップスの記念碑となる。
今なお現役の矢沢永吉は、昭和24(1949)年生まれ
大瀧の逝った平成25(2013)年は、AKB48、EXILE、嵐の台頭した年でもあり、島倉千代子、岩谷時子(作詞家)、藤圭子(宇多田ヒカルの母)といった昭和歌謡を担った大物も相次いで鬼籍に入った。
昭和がますます遠のくなか、今なお現役の矢沢永吉は、昭和24[1949]年生まれ。今年デビュー50周年を迎える。
*この記事の前編:日本人なら懐かしい「歌の昭和史」総ざらい(前編)
*この記事の中編:日本人なら懐かしい「歌の昭和史」総ざらい(中編)
高澤 秀次:文芸評論家
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