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「鼻が反り返った小さなヘビ」が急死した本当の訳 誤った飼い方で死んでしまうケースはよくある

東洋経済オンライン / 2025年1月26日 9時0分

ところで、今回のお話で出てきたシシバナヘビ。大人しい性質と愛くるしい見た目とが相まってペットとして人気ですが、飼育にあたっては注意点があります。

シシバナヘビは弱毒ではあるものの、唾液に毒を持つヘビです。最近ではSNSなどでシシバナヘビと気軽に触れ合う動画が多く見られ、その魅力が広く伝わっていますが、基本的には毒を持ったヘビであるということを忘れてはいけません。

万が一、かまれたとしても死に至るような猛毒ではありませんが、やはり毒蛇であることを十分に理解したうえで、かまれないよう慎重に扱う必要があります。

ヘビは魅力のある生き物

ヘビというと「凶暴」、「怖い」、「気持ち悪い」というイメージをお持ちの人が多いかもしれません。「写真を見るのも嫌だ」という人も少なくないでしょう。

しかしよく観察してみると、ヘビはクリっとした丸い目がかわいらしく、飼育してみると、一生懸命に餌を食べる姿や水を飲む姿に癒やされます。

ヘビは進化の過程で手足をなくし、水や地中、樹上といったさまざまな環境に適応した美しい生き物です。その姿形は、ある意味、生物として「究極」といえるかもしれません。

多くの人が本能的に苦手と感じる気持ちも否定できませんが、その一方で、大変に魅力のある生き物であるということを、少しでも知ってもらえたら幸いです。

爬虫類全般にいえることですが、ヘビは代謝が緩やかで、病気になっても症状が目に見えて出てきにくい動物です。生前に病気の診断をすることが難しく、死後に遺体の病理解剖を行い、初めて死因として病気や病原体が判明することが大半です。

そもそもヘビは、飼育がブームになっているとはいえ、イヌやネコと比べて飼育の歴史は圧倒的に浅く、最適な飼育方法や病気に関して、わかっていないことだらけなのです。

そのため、ヘビの飼い主さんは、病気を治すことよりも、病気にならないことを心掛けることが、何よりも大切となります。

どのように飼えばヘビは病気になりにくいか――僕たちはそれを、残念ながら亡くなったヘビたちの遺体から学びとらなくてはいけません。人間の医療ではそうやって、あまたの症例から人間の病気に関する知識を積み上げてきました。

実をいうと、獣医病理医として、ヘビの病理解剖の際には独特の緊張を強いられます。体がくねくねと動いてハンドリングが難しいことに加え、やはり鋭い歯が最大のネックとなります。

以前、動物園で6メートルのオオアナコンダの出張病理解剖を行ったとき、誤ってその鋭い歯で指を刺してしまったことがありました。

ヘビの歯は非常に鋭いので、刺さっても意外と痛みを感じません。そのときもちょっと歯に触れただけでしたので、当初は手袋が傷ついただけで指は無事と思っていました。

しかし、解剖後に手袋を外してみると、指から出血していることに気がついたのです。

幸い毒を持たない種であったものの、明らかに何らかの感染症で死亡していたので、傷口から病原体が体に入ってきてはいないかと、その後しばらくハラハラしながら過ごしたものです。

ヘビの病気解明にさらなる進歩を

今年も僕は、緊張を抱えながら何匹ものヘビを解剖することになるでしょう。「進歩の年」とされる巳年。1匹のヘビの死も無駄にすることなく、ヘビたちの命を通して、ヘビの病理学をさらに進歩させる――それが今年の僕の抱負です。

中村 進一:獣医師、獣医病理学専門家

大谷 智通:サイエンスライター、書籍編集者

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