PCが「通信込み」で買える時代は来るか KDDIがPC大手と組む「eSIMビジネス」の本気度
東洋経済オンライン / 2025年1月26日 9時30分
日本HPは、先行して2023年11月から「HP eSIM Connect」として、5年間の通信サービスを含んだPCを販売開始している。KDDIの那谷雅敏氏いわく、当初から「非常に手応えがあった」とのことで、この成功を踏まえた形で他社への展開を加速させている。
Dynabookは、2024年1月21日から「dynabook eSIM Startin'」というサービス名で、4年間無制限で使える通信込みPCを受注開始。対象機種はバッテリー交換が可能な「dynabook X83 CHANGER」からスタートする。
VAIOは、法人向けPCの3割以上に無線WANを搭載してきた実績があり、ConnectIN対応モデルを拡充することで、さらにビジネスユーザーへのアピールを強化する狙いがある。
メーカー側の新たなビジネスモデル
ConnectINは、PCメーカーがKDDIから回線を借りて通信サービスを提供する、いわゆるMVNO(仮想移動体通信事業者)の形態を取る。ただし、従来のMVNOと違うのは、メーカーが通信をあたかもPCの部品のように扱えることだ。
KDDIが持つ特許技術によって、認証された機器(PC)のみが通信できる仕組みを整えたことで、従来のように通信回線の契約数やアクティベーション(開通)実績を個別管理する必要がなくなり、単純に販売したPC台数に応じて収益を分配できる仕組みを実現した。
通常のMVNOモデルでは、契約数や開通実績を細かく管理しなくてはならず、システム開発や運用にも大きな投資が必要になる。
ConnectINの場合は、それらをKDDIが一括でサポートするため、メーカーは最低限の手続き(総務省への届出など)だけで、通信事業者として参入しやすくなる。
大手PCメーカーにとっては、通信サービスをまるごと自社製品に組み込めるうえ、初期コストとリスクを抑えられる魅力が大きい。
現在は法人向けが主戦場だが、KDDIの那谷氏によれば、個人ユーザーへの展開も検討しているという。個人の場合は使う頻度やデータ通信量にばらつきがあり、一律の通信プランでは対応が難しい面がある。
そこで、KDDIは格安プラン「povo」の仕組みを活用し、PC向けサービスへ展開する構想を検討しているという。
povoは必要なときだけデータ通信を“トッピング”ととらえ、必要な分の通信を追加できる仕組みのサービスだ。
これが実現すれば、個人ユーザーでも「買ったその日からネットにつながるPC」を手軽に選べるようになるかもしれない。
監視カメラや車いすに通信が“溶け込む”
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