ローカル鉄道旅行で気をつけたい「熊との遭遇」 風情ある山間の秘境駅に下車するのは危険伴う
東洋経済オンライン / 2025年1月27日 6時30分
石北本線ではこんなこともあった。当時は常紋信号場で下車することができた(生田原―西留辺蘂間)。周辺に民家はなく、乗降するのは鉄道撮影目的の客だけである。乗降はホームのないところで、ステップをたどって地面へ下りたのである。網走側から急勾配をD51が煙をモクモク吐きながら重そうな貨物列車を従え、後部ではDE10が後押しで登ってくる姿は圧巻であった。
常紋信号場はスイッチバック式で、遠軽側はトンネルがあり、そこが分水嶺となるので、そのトンネルの遠軽側も常紋信号場に向かって上り勾配になっている。しかし、その姿を撮影するためにはトンネル上部の山道を歩くか、トンネル内を歩くかの2択しかない。
そんな話をしていた撮影者に対し、信号場を管理するおじさんが「トンネルの上部は熊が出る、トンネルは昔、網走刑務所の囚人が掘っていて、犠牲者も出たので幽霊が出る、トンネルはカーブしているから出口が見えない、おっかないよ~」と話してくれた。
暗に遠軽側は行かないほうがいいと示していたのであろう。北海道には本州では見られないヒグマが生息し、道民はヒグマの恐ろしさを知っているので、本州から来る観光客に対し、警鐘を鳴らすような習慣があったのだと思う。
地方では沿線人口が減り、我々都会人が想像する以上に野生動物が急速に増えているのではないかと思う。特急列車に乗車すると、以前は旭川を過ぎると「ここから先は野生動物が多く生息するエリアです。急停車にご注意ください」という案内放送だったが、それが滝川を過ぎてからになり、近年は、時間帯にもよるだろうが岩見沢を過ぎるとこのような放送がある。
根室本線や九州の肥薩線に夕刻時に乗ったときは、沿線におびただしい数の鹿がいてびっくりしたことがある。夜間だと目が光るので昼間よりその数の多さが分かる。「こんなにいるのか!」という状況である。
動物目線からすると、かつてのような蒸気機関車が引く長い貨物列車に追いかけられたら怖かっただろうと思う。煙をモクモク吐き、汽笛を鳴らし、目(ヘッドライト)を光らせて近づいてくる。重い貨物列車は上り勾配で停止させたら再び動き出すのは大変なので、制動せず突進してきたであろう。鉄道に追いかけられた動物は二度と線路のあるほうへは近寄らなかっただろう。
しかし、現在は動物目線から見て怖くない列車が多い。ディーゼル発電でモーター駆動する静粛な車両が1両で走っていたのでは野生動物も敵とは思わないのではないだろうか。ローカル線が次々に廃止されていることもあり、野生動物の領域はますます拡大されていくだろう。
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