全国初「神戸市タワマン空室税」検討で揺れる正論 「廃墟化する」vs「家賃の値下げバトルに」で論争
東洋経済オンライン / 2025年1月27日 10時0分
京都市の課税標準は固定資産税とほぼ同じだが、「税負担については著しく過重な負担とまでは言えない」との考えだ(総務省・地方財政審議会令和4年3月14日議事録)。
総務省の考えによれば、課税標準が同じでも著しく過重な税負担でなければ、不当な二重課税ではないということになる。したがって、神戸市の場合も、新たな空室税は固定資産税の標準課税である固定資産評価額(公示価格の70%)をベースにしても、「著しく過重な負担」となる税額でなければ、総務大臣の同意を得られる可能性がある。
神戸市のタワマンに対する空室税導入検討がニュースになる少し前、京都市の宿泊税を最高で1泊1万円にするという方針がやはりニュースになったが、この宿泊税も自治体が条例に基づいて定める法定外税だ。
神戸市の久元市長は、資産価値の劣化が起きればタワマンの中で空き家が増えて廃虚化する可能性が極めて高いとの認識を示しているが、神戸市は人口が減少しており、タワマン建設抑制政策によって、人口減がさらに進むとの見方もある。
これに対して、久元市長は「目の前の人口増をめざすのではなく、長い目でみて持続可能な都市として発展していきたい」と述べた。
私的所有物を法定外税制で規制できるか?
自由主義経済のなかで、不動産も私的所有物である「物」として自由に所有、使用できることが原則であり、投資の対象にもなっている。一方でその名の通り、動かせない所有物であり、その所有・利用は都市計画や交通網の整備といった社会的な問題解決の障害になることもあり、利用規制や税制などを通じて、「公益」のために制限している。
しかし、自治体の法定外税制によるそうした規制手法が、私的所有を経済秩序の基本施策とする現代日本においては十分なコンセンサスが得られるかは疑問だ。
自動車においては、自動車税、自動車重量税があり、ガソリンに対してはガソリン税があり、さらにガソリン税額に対しても消費税がかかる二重課税が議論となっている。
不動産課税については、そもそも課税標準が異なれば、違法な二重課税ではないという考えでは、同じ不動産でも新たに建物の高さによる「高さ税」や窓の数に応じた「窓税」などを自治体が重複して課しても許されるということだ。
今後の神戸市の動きと国(総務大臣)の判断が注目される。
細川 幸一:日本女子大学名誉教授
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