郵政改革を「骨抜き」にする民営化法の見直し議論 背景に郵便の業績悪化、改正案は成立の公算
東洋経済オンライン / 2025年1月27日 8時0分
自民党で郵政民営化法の改正に向けた動きが本格化している。
すでに改正案の骨子となる「郵政事業を取り巻く環境の変化への対応策」をまとめており、「郵便局ネットワーク維持のための財政上の措置」を手当てすることなどが盛り込まれている。自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(郵活連)の議員らが中心となって、1月24日に招集された通常国会に議員立法で改正案を提出する見通しだ。
郵便局ネットワークを維持するための財政支援の財源は、政府が保有する日本郵政株の配当収入(年間628億円)や、ゆうちょ銀行が国庫に納めた休眠貯金(過去15年間で1875億円)が想定されている。「できる限り早期に」となっていた、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式の処分時期も見直し、「当分の間」は3分の1超の保有を日本郵政に義務付けることなども改正案に盛り込む。全株式の売却を目指す郵政民営化の方針とは逆行する動きだ。
総務大臣が「郵政改革に反対だった」
郵政民営化法をめぐっては、昨年12月に開かれた参議院総務委員会での村上誠一郎総務大臣の発言も、業界関係者の間で物議を醸している。
同委員会で、日本郵政グループ労働組合(JP労組)の組織内議員である立憲民主党・小沢雅仁参議院議員が「郵便の責務を履行するための経営財源が枯渇し始めている。(中略)総務省としてしかるべき支援をやっていただかないと」と述べ、村上大臣の所感を求めた。それに対し大臣は「個人的見解」と前置きした上で、「(日本郵便の)現状を聞いて非常に驚いている。私自身は郵政改革に反対だった」と発言した。業界関係者は「総務大臣までもがあんな発言をするとは」と驚きの声を上げる。
自民党は昨年行われた衆院選の政権公約に、郵政民営化法の改正を目指すことを盛り込んでいた。「民間にできることは民間に」というスローガンの下、2005年以降進められてきた郵政民営化の流れは、改革を進めてきたはずの自民党によって「骨抜き」にされようとしている。
この動きの背景にあるのが、日本郵政傘下の日本郵便の業績悪化だ。
2023年12月に示された総務省の試算によれば、2028年度には郵便事業の営業損益が1232億円の赤字に陥ると予想されている。昨年10月の30年ぶりとなる郵便料金の値上げがなければ、3439億円の赤字になるとも予想されていた。
郵便事業が低迷する原因は明白だ。デジタル化の進展に伴う郵便取扱数量の急減がそのまま業績に直撃している。2025年元日の年賀郵便配達物数も前年比34%減の4億9100万通まで落ち込んだ。
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