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XやMetaを巻き込みネットリテラシー向上に本腰 官民共創プロジェクト「DIGITAL POSITIVE ACTION」の狙い

東洋経済オンライン / 2025年1月28日 11時0分

しかし、その対策として選んだのは、規制でも完全な自主規制でもない、「共創的アプローチ」だ。

総務省の吉田弘毅企画官は「制度だけでやっても解決せず、技術的対応とリテラシー向上が三位一体となって初めて効果を発揮する」と説明する。

プラットフォーム企業のビジネスモデルと整合性のある形で改善を促す点もこのアプローチの特徴だ。

規制によってビジネスモデルを否定するのではなく、「カスタマーファーストにつながる取り組み」として位置づける。

官民連携プロジェクトとなる本プロジェクトでは、19社の関連団体や企業が参画している。

関連団体には、安心ネットづくり促進協議会などの6団体が参画。プラットフォーム事業者としてGoogle、Meta、LINEヤフー、TikTokの5社が参加しており、NTTドコモやKDDIなどの通信事業者や、GunosyやNewsPicks Studiosなどのメディア系企業まで揃い踏む。

資金スキームは「プロジェクトの資金は、主にそれぞれの企業・団体が負担する」(吉田企画官)という。総務省はWebサイト構築や共通イベント会場の確保など、「“外側”のプラットフォーム整備を担当する」(同)。

プロジェクトは3つの柱

各社にはこれまで自社の社会貢献活動として行っている教材作成やセミナー開催などの啓発活動がある。これらのコンテンツや活動を束ねて周知・宣伝効果を高めようというのがプロジェクトの狙いとなる。

プロジェクトは3つの柱で構成される。第1に、多様な関係者の取り組みを集約した総合的なWebサイトの開設。

第2に、セミナーやシンポジウムの開催および普及啓発教材の作成・活用。第3に、各種広告媒体を活用した広報活動だ。

すでに各社は具体的なアクションを開始している。Metaは「みんなのデジタル教室」というデジタルリテラシー教育プログラムを展開。Googleは「#ほんとかなが、あなたを守る。」キャンペーン第2弾を継続中だ。

TikTokは2月にクリエイター向けの偽・誤情報対策ワークショップを開催予定で、LINEヤフーは「Yahoo!きっず」を通じたインターネットリテラシーの向上を促進する。さらに日本マイクロソフトは、AIの適切な活用に関する多様なプログラムを通じて偽情報対策に取り組む。

業界横断的な取り組みも計画されている。SNS上の誹謗中傷対策サイト「NoHeartNoSNS」の運営(SMAJ・SIA等)や、ネットセーフティ・インストラクターの研修・認定(SIA)、携帯ショップ等におけるリテラシー向上に関する講習会(通信事業者)など、様々な角度からの施策が予定されている。

実効性と課題

このアプローチには課題もある。まず、自主的な取り組みに依存する形では、EUのDSAのような明確な法的拘束力を持たない。各社の対策方針や技術的アプローチが異なる中、共通の対応指針を見出すのも容易ではない。

一方で、業界横断的な対話の場が継続的に設けられることで、各社のベストプラクティス共有を通じた対応水準の底上げも期待できる。表現の自由への配慮と安全性の確保という難しいバランスの中で、日本型の「共創的アプローチ」が、新たな可能性を切り開くかもしれない。

デジタル空間の健全化という課題に対し、規制と自主的な取り組みのバランスをどう取るのか。このプロジェクトの行方は、日本のデジタル政策の新たな方向性を示す試金石となるだろう。

石井 徹:モバイル・ITライター

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