中華製AI「DeepSeek」はNVIDIAを駆逐するか 無料で性能はChatGPTにほぼ引けを取らない
東洋経済オンライン / 2025年1月28日 22時10分
DeepSeekの推論型モデルR1は、ChatGPTの推論型モデル「o1」とほぼ同等の高い思考力を持つと言われる。試しに筆者が2024年度の東京大学・入試問題・数学理系の第2問(図2)をDeepSeekに入力して解かせたところ見事に正解を返した(図3)。
ただし同入試問題の全6問(各々、複数の小問を含む)をDeepSeekに解かせてみると、全体の正解率は30%を若干下回る。ちなみにChatGPTの「o1」にもまったく同じ問題を解かせてみたが、正解率は概ね30%だ。両者の性能は同程度とする見方は当たらずとも遠からずという印象を受ける。
かなり高度な性能を有するDeepSeekだが、基本的に有料のChatGPT-4oやo1とは対照的にDeepSeekは無料で使える。このため先日、アメリカではアップルのアップストアで提供されるアプリのダウンロード回数でChatGPTなどを抜いて第1位となった。
ただし一般ユーザーにとって、DeepSeekの利用には警戒が必要との声も聞かれる。昨年から今年にかけてアメリカで政治問題となった中国製アプリ「TikTok」同様、DeepSeekを利用したユーザーの個人情報が同社のような中国企業を経由して、中国政府の手に渡る危険性が指摘されているからだ。
これはアメリカのみならず、日本をはじめ自由主義諸国のユーザー全体について当てはまるが、少なくともアメリカではDeepSeekアプリがアップストアで第1位にランクされたことから見て、ユーザーの大半はほとんど気にしていないようだ。
中国の近・現代史や政治問題には回答拒否も
また、DeepSeekは中国の近・現代史や政治問題など答え難い質問には、回答を拒否したり、プロパガンダや虚偽情報を返してくることもある(図4、5)。
以上のように中国の政治問題など一部の分野では、DeepSeekの回答はほぼ信頼できないが、裏を返せば、それ以外の大半の領域ではDeepSeekはChatGPT-4oやo1などアメリカ製AIにほとんど引けを取らない。
これはOpenAIやグーグルをはじめアメリカのIT企業には脅威となる。これらアメリカ勢が有料で提供する生成AI製品と性能的にほぼ同等のものを、中国のDeepSeekは無料で提供するからだ。
また最近、トランプ大統領と共に、OpenAIとソフトバンク、オラクルが共同で発表した最大5000億ドル(約78兆円)のAIインフラ計画「スターゲート」など、これまでアメリカ勢が生成AI開発に投入してきた巨額資金への評価も根本的な修正を迫られる。
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