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自分より「推し」の成功を望む若者たちのリアル 「世界一幸せな衰退国」日本の歪んだ幸福感

東洋経済オンライン / 2025年1月30日 9時0分

一方で、リアルな生活で希望を持てず、さらに、バーチャルな世界にも行けない人が存在する。つまり、希望の持てる仕事に就いているわけでもなく、生活が豊かになる見通しもない。自分を大切に思う家族もいなければ、理想的な結婚ができる見通しもない。

そのように現世に絶望した人の中から、欧米のように、原理主義的新興宗教に走る人もでてくる。平成にもオウム真理教事件があったし、近年では統一教会が話題になっているが、現世の財産をすべてなげうって来世に希望を託す人もいる。

また、秋葉原事件などにみられるように、現世に見切りをつけ、「不特定多数」の人を道連れに、「死刑になってもかまわない」と言って罪を犯す人もいる。

ただ、欧米に比べれば、その規模は小さいのが日本の特徴で、バーチャルな世界がリアルな世界で希望を失った人たちの受け皿になっていることが大きいと私は見ている。

筆者は、日本社会は世界の中で、経済的には、徐々に衰退していくと見ている。社会は分断され、大きな経済的発展はなく、少しずつ生活水準が低下する。この「少しずつ」というのがポイントだと思っている。

少子高齢化によって、現役世代が減少し、年金を受給する高齢者が増えていく。財政状況は徐々に悪化する。それ以上に、介護人材が大きく不足する。外国人に頼ろうとしても、日本の経済力が落ちているため、移民が来るどころか、チャンスを求めて海外に脱出する優秀な若者が増える。

経済成長は可能であっても、世界の成長率に比べれば、相対的に小さいままであろう。つまり、1人当たりGDPは、現在の先進国やアジアの新興国に遠く及ばないだけでなく、中進国にも追いつかれているかもしれない。

優秀な官僚による経済・社会運営

日本の政府、官僚はとても優秀で、「大きな経済危機」、つまり、一度に多くの人が生活できなくなるという事態は防がれると見ている。全体が破綻しないように、大きな不満が出ないように、経済・社会は運営されていくであろう。

例えば、高齢者を例にとろう。年金水準を「少しずつ」引き下げる。新たに年金をもらう人は、比較のしようがないからそれを甘受するしかない。10年前にもらい始めた人に比べて相対的に少ない年金であっても、それを実感することはないだろう。だから、文句はあまり出ない。

公的な介護水準も「少しずつ」引き下げられる。例えば、同じ介護基準の人でも、以前は週2回入浴サービスを受けられていたのが、月に2回になるというレベルである。これも、新たに要介護者になる人にとっては、前と比較しようがないから、文句は出にくい。

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