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自分より「推し」の成功を望む若者たちのリアル 「世界一幸せな衰退国」日本の歪んだ幸福感

東洋経済オンライン / 2025年1月30日 9時0分

日本人は、同じ立場の人の間で差が付くのは嫌がるし、今介護を受けている人が、突然その水準が低下すると怒り出すかもしれないが、前の世代と比較して水準が低下していてもあまり気に留めないものである。

なぜなら、年金水準や介護水準の低下は、現実に今でも起きていることだが、ほとんど目に見えない形で実施されるからである。また、比較的富裕な層は、公的な部分に頼らない形で老後の資金、介護計画を立てるので、大きな反対運動は起きないのである。

現役世代も、収入はあまり増えず、増えた分は、税金や社会保険料の上昇によって帳消しにされる。同年代で比較した場合、実質可処分所得は、平均的に見れば、今後、減ることはあっても増えることはない。しかし、同世代を見てみれば、皆が同じような収入で、同じような生活を送っていれば、大きな文句は出ない。

このように、平均的にみれば少しずつ、徐々に生活水準が低下する。そして、多くの国民は、それを仕方がないものとして受け入れていくだろう。なぜなら、多くの日本人は、リアルであれ、バーチャルであれ、それなりに満足しているからである。

不満は比較から生まれる

結婚して伝統的家族を形成・維持できている人々(男性正規雇用者、正規雇用者と結婚した女性)は、子どもを育てながら、将来人並みの生活を送れるという希望を持つことができるだろう。

生活水準は、前の世代に比べれば低下するにしろ、「節約」すれば、「人並みの生活」は送れるし、時折、推し活やゲームなどのバーチャル世界で楽しめば、たいしたお金はかからない。

独身者など、将来、昭和型の家族が形成できない人も、リアルな世界で多少生活水準が落ちても、ゲームや推し活という世界で楽しむことができる程度の収入がある限り、文句は言わない。

不満は比較によって生まれる。みんな一緒に少しずつ、貧しくなるのであれば、多くの人は不満を持たない。みんな一緒というのがポイントである。現代の日本人は、何よりも、自分だけ損をすることを最も嫌う。自分が多少損をしても、周りのほかの人が同じくらい損をするならば耐えられる。

もちろん、人並みの生活自体が成り立たない、バーチャルに使える程度の収入もないという状態になれば怒るだろうが、そうでない限り、今のままの生活が続くことを願う。そして、その願いは、政府、官僚がかなえてくれているし、自分が何もしなくても、政府が安定した社会を保証してくれると信じているともいえる。

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