5%成長は本当?中国経済「失速」の知られざる実態 貿易黒字は過去最大でも「産業空洞化」の懸念
東洋経済オンライン / 2025年1月30日 7時50分
そうすると、「不動産価格は上がっていく」という期待で成り立っていた経済が崩れる。例えば、不動産を買って、それを貸したり売ったりすることで老後の資金にするという人生設計がガラガラと崩れてしまうというわけです。結果として、しょうがないので消費を手控えるという現象が中国全体で起きているのだと思います。
輸出攻勢を続ける習近平政権が抱えるジレンマ
――中国政府は消費を喚起するために財政出動する姿勢をあまり見せません。なぜなのでしょうか。
これまでの中国の成功体験として、財政赤字を一定程度に抑えつつ、供給サイドを非常に重視してきました。EVをはじめとした世界の最先端産業において「製造強国」になる目標を掲げ、ある程度成功してきた。
供給力を上げて生産性を伸ばしていくことが至上命題であるという縛りがあるために、お金をばらまいて需要を支えましょうというマインドにならないのではないかと考えています。
――国内の消費が振るわない中で供給能力を強くすると、それを海外に向けざるをえないという話になります。実際、2024年に中国の貿易黒字が過去最大になりました。海外、とくにアメリカとの摩擦が懸念されますが、中国が輸出攻勢を続ける狙いは何でしょうか。
習近平政権においては、供給力を強くすること、先進的な技術を持った企業を生み出すことが大きな目的です。
今のところはBYDのように急成長している企業や太陽光パネルなどの新興産業で有力な企業が先進国に積極的に輸出する、あるいは海外に工場を建設してそこで現地生産をしていくといった海外展開を積極的に支援しています。
ただそれが大々的に進むと、貿易摩擦を引き起こしてしまう。実際、EVなどに関して、アメリカやEUは高い関税をかけています。それに対応するために、東南アジアやラテンアメリカなどの新興国に工場を建設して、そこから欧米に輸出していく動きが、ますます加速していく可能性があります。
そうなってくると、供給能力は今後も強くなっていきますが、国内の雇用や一般の人々の消費はますます伸び悩んでしまうのではないかというジレンマを抱えてしまいます。加えて、かつて日本が経験したような産業空洞化が起きる可能性があります。
さらに問題なのは、中国の場合、急速に産業空洞化する可能性があることです。中国は日本に比べて経済のサービス産業化が遅れているため、製造業が国外に出て行っても、サービス産業が吸収しきれない。社会保障がそれほど充実していない中国においてそれが起きると、大きな社会不安につながっていく可能性があるというわけです。
財政出動しただけでは「根本的な解決」にはならない
この記事に関連するニュース
-
今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望している理由
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月30日 6時45分
-
中国経済減速 本格回復への道筋が見えない
読売新聞 / 2025年1月26日 5時0分
-
お金は知っている 「トランプ高関税砲」が中国を狙う理由 ロシアと組み米覇権に挑戦も…ドルに依存 関税で貿易黒字吹っ飛ばされれば金融危機に
zakzak by夕刊フジ / 2025年1月24日 6時30分
-
「習近平新年談話」から読み解く中国経済の現在地と見通し。にじみ出る危機感
トウシル / 2025年1月9日 7時30分
-
中国経済の失速・デフレ化が世界金融市場の「無視できないリスク」になる
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月8日 15時4分
ランキング
-
1エレベーターで男性挟まれる事故 脳にダメージ受けた可能性も
KKT熊本県民テレビ / 2025年1月30日 19時49分
-
2奈良県の”メガソーラー計画”断念 山下知事「地元の理解が得られない」 より小規模なソーラー施設を検討へ
ABCニュース / 2025年1月30日 18時24分
-
3旅券発給拒否、二審も「違法」=安田純平さんの訴え認める―東京高裁
時事通信 / 2025年1月30日 19時26分
-
4救助作業阻む新たな陥没と水 トラック運転席は目視できず 八潮陥没事故
産経ニュース / 2025年1月30日 17時50分
-
5東大阪の山中切断遺体、衣服や所持品身につけず 「警察官40人ぐらいで捜索」と近隣男性
産経ニュース / 2025年1月30日 17時2分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください