日大の「学祖」と吉田松陰の知られざる"奇縁" 西郷から「用兵の天才」と賞賛された維新の志士
東洋経済オンライン / 2025年1月31日 10時0分
山田の家系を顕義から見ると、実父の顕行が吉田松陰の師として長州藩の軍政を司った亦介の弟で、藩政改革を断行した村田は大伯父にあたる。つまり幕末の長州藩では、村田清風、山田亦介、吉田松陰、山田顕行、そして日大学祖の山田顕義という系譜で藩の兵法が伝授されてきたのである。
兵法学者の偉大な伯父と海軍頭取を父に持つ山田顕義は、14歳になったばかりの1857(安政4)年、松下村塾の門をたたいた。念のため塾生を列挙すると、久坂玄瑞、高杉晋作、木戸孝允、伊藤博文、井上馨、吉田稔麿、入江九一、前原一誠、品川弥二郎、山田顕義、野村靖、渡辺蒿蔵、河北義次郎などの面々がいる。そのなかでひときわ若かった山田顕義は、吉田松陰の最後の門下生となり、自ら幕末、維新の動乱に身を投じた。
山田の松下村塾入りからわずか2年後の1859年10月には、師の松陰が安政の大獄で処刑される。山田は同門の高杉晋作や久坂玄瑞、井上馨や品川弥二郎らとともに攘夷の血判書「御楯組血判書」に名を連ね、明治維新の立役者の一人に数えられるようになる。
1864(文久4)年1月に高杉晋作とともに脱藩した山田は大坂や江戸に向かい、この年の7月には長州藩士が挙兵した京都の「禁門の変」に加わった。25歳にして戊辰戦争における討伐軍の指揮をとり、官軍総大将の西郷隆盛から「用兵の天才」と讃えられたという。
初代司法大臣となった「小ナポレオン」
明治維新後の山田は、師である松陰の教えに従い、欧米の軍や法の制度を学んだ。1871年10月には兵部省理事官として岩倉遣外使節団に加わり、フランスへ渡る。そこでナポレオン法典に感銘し、「法律は軍事に優先する」という思いにいたったとされる。
「小ナポレオン」と称された山田は、明治の初代司法大臣として近代国家の骨格となる明治法典を編纂した。それが、大学創設の端緒となる。山田は日大の前身である日本法律学校の創設を進めた。
明治維新後の日本の大学制度は、1877(明治10)年4月に創立された東京大学が始まりだ。その後の86年の帝国大学令により、全国に7帝国大学が生まれた。日本の高等教育は明治時代の終盤まで旧帝国大学ならびにナンバースクールと呼ばれた旧制高校が担ってきたといえる。
一方、私立大学の多くは、法律の専門学校がその起点となっている。創立順からいえば、東大から遅れること3年の1880年4月、法政大学の前身である「東京法学社」が創設された。次がこの年の9月創立の「専修学校(のちの専修大学)」、1881年1月創立の「明治法律学校(のちの明治大学)」、1882年10月創立の「東京専門学校(のちの早稲田大学)」、85年7月創立の「英吉利法律学校(のちの中央大学)」といった具合である。
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