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子どもたちの「知識」を「体験」につなげる "やってみる"ことで見えてくる新しい視点

東洋経済オンライン / 2025年1月31日 8時15分

窪田:それでは美味しくない(笑)。

井筒:その話をした後に、「地球で炭酸が飲めるのは、重力のおかげなんだよ」と言うと、子どもたちは炭酸を飲むときに、ちょっとだけでも宇宙を想像できると思うんです。

地球で当たり前にできていることが宇宙では難しいとわかれば、より地球を感じられるんじゃないかなと。重力ゼロの環境は、地球のものを見つめ直す題材として、すごく魅力的だと思っています。

窪田:たしかに宇宙を知ると、この世界の見え方が変わりますね。NASAのスタッフから聞いた話ですが、「宇宙から帰ってきたばかりの人と立食パーティをすると、持っているワイングラスから手を離して割ってしまう」のだと。

井筒:あぁ、なるほど。宇宙では空中に置くのが当たり前になっているので、つい置いてしまうんですね。

窪田:「あ! ここは地球だった!」って、慌てるそうです。

井筒:宇宙飛行士の向井千秋さんも、「宇宙から見た地球の美しさは想像していた通りだったけれど、地球に帰ってきてから体が感じた重力は予想もしていなかった」とおっしゃっていましたよね。より地球の重力を感じるようになったというエピソードが印象的でした。

「知識」を「体験」につなげる

窪田:井筒さんの活動をお聞きしていると、宇宙の知識を伝えることで、子どもたちの体験につなげているように感じます。

井筒:たしかにそうかもしれません。私自身、もともと知識を得るだけで満足していたタイプだったのですが、『バカの壁』で知られる養老孟司先生とお仕事をさせていただく機会があり、そこで改めて“体験”の重要性を実感するようになりました。

養老先生は、都市と田舎を往来する「現代の参勤交代」を推奨するなど、自然の中で五感を使って感じることの大切さを伝えていらっしゃいます。

窪田:井筒さんは田舎への移住によって、体験できることが増えたのでは。

井筒:そう思います。移住してから狩猟免許を取って、何度か狩りに参加しました。結局、自分では1発も当てられなかったのですが(笑)。ある日、先輩ハンターが獲った鴨を解体したときに、胃袋の中に穀物がびっしり詰まっていたんです。

それを見たときに、「命ってつながっているんだな」と強く感じました。穀物を食べて生きていた鴨を、自分たちが肉として食べる。そのつながりが強烈に迫ってきました。

窪田:まさに知識だけでは得られない、五感を使った体験ですね。私が外遊びを推奨しているのは、近視を抑制する効果があるのはもちろんですが、子どもたちにそうしたリアルな体験をしてほしいと思うからなんです。

次回は、人間が火星に移住するにあたって、重要な課題となっている目の問題について、「宇宙」と「目」の両方の視点から話しましょう。

(構成:安藤梢)

井筒 智彦:宇宙博士、東京大学 博士号(理学)

窪田 良:医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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