中居問題がフジを揺るがす騒動に発展した理由 "コタツ記事"の普遍化がもたらした日本の暴走
東洋経済オンライン / 2025年1月31日 18時0分
推測でしかないが、フジテレビ幹部は「A氏の関与はあり得ない」「X子さん本人の希望により少人数での情報共有にとどめ、プライバシーに配慮した」と、ある面で当事者として確実な情報を持ち、第三者ではあるものの中居氏とX子さんのトラブルも把握、和解をしている中で(トラブルそのものに対しては第三者である)、週刊誌報道に対するフジテレビとしての立場を説明しようとした。
これが最初のフジテレビ・港社長の記者会見だった。
この会見内容が伝えられると、すぐに確証バイアスとエコーチェンバー効果で“フジテレビの罪は明らかだ”と考える人たちが、一斉に非難し始めたのは当然の成り行きと言えるだろう。
フジテレビの現状認識や問題意識、ネット世論を形成する歪んだ事実認定の乖離は大きく、巨大メディア企業が“女性個人”や“個人事務所所属のタレント”を押しつぶし、何かをもみ消しているかのように映ったに違いない。
もし、フジテレビがネットコミュニティから見えている景色を少しでも理解できていれば、記者会見の結果は大きく違っていただろう。
和解内容は守秘義務であり、それまでの社内調査や聞き取りもすべてを公開できるわけではない。そこには“外部からは見えない正当性”があったはずだ。法的なリスクを優先して「説明不能な沈黙」を選んだ結果、「隠蔽の確信犯」と誤解されるリスクを軽視してしまった。
一次情報源を持たない記事が“当たり前”の怖さ
ジャンルは違えど、筆者もジャーナリストの端くれである。
一般論だが、SNSでの噂話、個人的な発言と記者として書く記事の違いは、情報をどのように入手し、その情報の質、確度などを吟味し、誤解を与えないよう伝えることだと思う(もちろん、ほかにも配慮するべきことはたくさんある)。
近年、“コタツ記事”という言葉が一般に定着してきた。この言葉は、僭越ながら筆者がネット上で入手できる情報だけを集め、一次情報へのアクセスが可能にもかかわらず、自分の書きたいストーリーに情報をパズルのピースのように集めて構成する記事として使い始めたのが始まりだった。
普遍化するコタツ記事
必ずしもマイナスのイメージで語っていたわけではなく、いわゆる“文献派”執筆者のネット進化版のようなものを表現していたのだが、その後、スポーツ紙などがテレビでの著名人の発言を切り取って発信したり、SNSで切り取り発言を放流したのちに生まれたエコーチェンバー効果による流言飛語を“ネット世論では”と再発信するなど、コタツ記事の位置付けは否定的な意味合いへと大きく変化した。
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