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「東京サラダボウル」が描く日本の外国人犯罪の闇 弱者が搾取されて利用されるリアルに切り込む

東洋経済オンライン / 2025年2月3日 12時0分

異端の存在である鴻田は、困っている人のために、いつも些末な事件にひとり取り組むが、それが外国人の犯罪集団と不法滞在者などの弱者が複雑に絡み合う大掛かりな組織犯罪の一部につながる。

そこに映るのは、日本社会でマイノリティとして暮らす外国人居住者たちの生活には、大なり小なりさまざまな困難や葛藤があり、誰もが社会的弱者であること。

そして、多くの善良な外国人居住者たちのすぐ近くで同じ外国人による犯罪が起こっており、知らず知らずのうちに関与していたり、意図せず巻き込まれたりする現実がある。

訪日外国人旅行者でにぎわう街が背中合わせにするリアルであり、多くの日本人にとっては、警察に取り締まってほしいものの、どこかで無関係であるとも考えてしまう現実だろう。

それを明るくポップなキャラクターを主人公にしてオブラートに包みつつも、他人事ではすまない日本社会の一面をシリアスに目の前に突きつけてくる社会的意義のあるドラマになっている。

第3話と第4話は前後編となり、2週にわたって中国人犯罪組織による戸籍売買の闇が描かれた。

中国では赤ちゃんや子どもの誘拐と人身売買が社会的な問題になっていることが伝えられているが、それが日本の中国人社会でも戸籍売買からつながる犯罪として生々しく映し出された。

日本に帰化した中国人女性を妻に持つ日本人男性が、深い考えもなく戸籍を売る。そこから、赤ちゃんが誘拐事件に巻き込まれてしまう。別の不法滞在の中国人夫婦は、犯罪組織に騙されて誘拐された赤ちゃんを中国に連れ出そうとする。

もちろんエンターテインメントとしての脚色や演出はあるだろう。しかし、在日中国人たちのなかの弱者が犯罪組織に搾取され、利用されながら犯罪に巻き込まれてしまう話が、リアリティを伴って伝わってくる。

偏見や差別へのアンチテーゼ

そんな事件に向き合う鴻田の存在は、日本人社会の外国人犯罪や外国人事件に対する一部の偏見や差別へのアンチテーゼだろう。

外国人への建前を声高に主張するのではなく、彼らを特別視するわけでもない。食をはじめ外国の文化を自身が楽しみながら、彼らの立場になって生活に寄り添う。

人種や言葉、文化の壁を取っ払った人同士の付き合いから、お互いへの理解を深め、ともに生きやすい社会になることを目指す。そんな当たり前のことを改めて示しているが、それが真っ当であるからこそ、映像に力が宿っている。

これからの日本はさらに少子高齢化社会へと突き進む。外国人の労働力が社会全体で欠かせなくなりつつあるなか、労働移民型移民社会である日本でわれわれ日本人が向き合わなければいけない現実を指し示している。

知らなかった人生に出会うドラマはおもしろい。ただ、本作にはおもしろいだけではないメッセージがある。いまの時代にこそ考えるべきテーマを投げかける力作だ。

武井 保之:ライター

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