清水建設「建築事業立て直し」を託された次期社長 利益率改善のカギは「受注時採算の確保」
東洋経済オンライン / 2025年2月6日 8時0分
受注時採算の確保に注力するなどし、主力の建築事業は回復傾向にある。2025年3月期の建築の完成工事損益率(単体)は7.1%を予想しており、前期(マイナス2.9%)を底に改善していることがわかる。
受注について新村氏は「建設工事物価がこの調子で上がると、来年着工時には(建設費が)15%、20%ぐらい上がるという話をすると、『なんだ清水は』という話も実はある」と明かす。
そのような状況で「なかなか理解してもらえないこともあるが、受注時の条件というのはコストだけでなく、工期も含めてきちんとやれることをお客様に伝えるのがスタート地点で大事なこと」と強調する。
昨年には、採算確保に対する清水建設の姿勢がうかがえる出来事もあった。野村不動産などによる「中野サンプラザ」跡地の再開発案件においてのことだ。工事費高騰などの影響で想定工事額が900億円超上振れるとして、施行認可申請が取り下げられた。
工事の見積もりを出した清水建設に対して、大手ゼネコン幹部からは「デベロッパーとの関係は大丈夫なのか」と心配する声も上がる。建設費の高騰が引き続き見込まれる中、採算確保に向けた交渉で理解を求めることが一層重要になる。
市場の期待感は、高値圏にある株価に表れている。昨年11月、2025年3月期の営業利益を410億円から560億円へと上方修正したことに加え、増配や自己株買い、政策保有株残高の縮減目標などの発表が好感された。
ただ、稼ぐ力ではライバルと差がある。上場するスーパーゼネコンの前期の営業利益率は、鹿島5.1%、大林組3.4%、大成建設1.5%。それに対して清水建設はマイナス1.2%だった。今期は3%に回復する見込みだが、それでも4社の中でいちばん低い。
新村氏は主力の建築事業の立て直しに加え、新たな収益源の開拓も求められる。井上社長時代に参入した洋上風力工事向けの大型SEP(自己昇降式作業)船運用ビジネスなどを伸ばせるかが注目だ。
中計最終年度の2027年3月期には、営業利益を1000億円に引き上げることなどを目標に掲げる。新村氏は「きちんとした結果を出せると確信している。油断は禁物なので引き締めながら取り組んでいく」と意気込む。
宮本会長の相談役就任に業界は注目
社長交代とは別に、建設業界が注目したのは同社会長の宮本洋一氏(77)が相談役に退くことだ。
宮本氏は2021年度から、建設分野を代表する業界団体「日本建設業連合会」(日建連)の会長を務めており、昨年12月の理事会で再任が内定した。今年5月に正式決定される予定で、任期は2027年春までとなる。
実はこれまで日建連のトップを務めたのは、ゼネコンの会長・社長しかいない。日建連は「とくに必要があると認められる場合のため、定款上は問題ない」と説明する。一方で、日建連会長は業界の「顔」でもあり、今後の会長人事に影響があるのか気になるところだ。
具志堅 聡:東洋経済 記者
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