「トランプ関税」発動なら原油価格はどうなるのか 価格高騰か、それとも生産増加で急落か
東洋経済オンライン / 2025年2月7日 10時0分
単純に25%の関税分だけコストが上昇するだけにとどまらず、両国が報復措置として、アメリカに対する石油の供給を削減するリスクも高いとみておいたほうがよい。特にカナダ産の供給が落ち込めば、北西部の製油所は大きな打撃を受けることになるだろう。
このことは短期的には原油相場の大きな押し上げ要因になると思われるが、中長期ではアメリカ経済を疲弊させるという点で、売り材料になる恐れが高い。また、やはり長い目で見ると、需要面の弱気材料が徐々に売りを呼び込むようになってくるだろう。
確かに今後、大幅減税や大胆な規制緩和が景気を活性化させ、需要を押し上げる可能性は十分に考えられる。だが、持続的な経済成長やそれに伴う需要の増加につながる可能性は低いとみておいたほうがよい。それよりも、関税や移民政策を強硬に推し進めた場合の、インフレ高進やFRB(連邦準備制度理事会)のタカ派転換に伴う景気への悪影響が、弱気に作用する恐れのほうが高いと考える。
確かにトランプ政権が民主党の前政権が推し進めてきた、クリーンエネルギーへの転換促進にストップをかけようとすれば、それは一時的な需要の増加につながることもありうる。だが、脱石油に向けた大きな流れを止めてしまうほどの影響力はないと思われる。
仮に強硬な手段に打って出ることがあったとしても、それはいたずらに経済の混乱をもたらすだけの結果に終わってしまう可能性が高く、需要をさらに後退させてしまうことになるのではないか。ロシアやイランの生産が大幅に落ち込むことのないまま、需要の低迷が材料視されるようになってくれば、再び1バレル=60ドル台までは値を切り下げることになると、みておいたほうがよさそうだ。
サウジなどが増産に踏み切れば、相場急落も
もちろん、一方ではOPECプラスの動向にも、十分な注意が必要だ。彼らは昨年12月に開いた会合で、予定していた減産幅の縮小開始を3カ月先送り、4月1日からにすることで合意した。
需要の伸び悩みや価格低迷が背景にあったわけだが、足元の相場上昇の流れが続くなら、今度こそ減産の縮小、つまり増産を開始する可能性が高そうだ。またサウジアラビアが方針を転換、価格維持よりも市場における生産シェアの回復を優先させる形で生産を大幅に増加させる可能性も、完全に消滅したわけではない。
現在の原油相場は極めて不安定だが、ここから一段と相場が上昇してくれば、アメリカのシェールオイルなどのコストの高い油田も採算が取れるようになり、生産量が一段と増えてくることも考えられよう。
恐らくは夏から秋にかけての話になると思われるが、こうした生産の大幅な増加が現実のものとなれば、相場も大きく値を崩すことになるだろう。状況次第では、1バレル=50ドル割れを試すあたりまでの急落も想定しておきたい。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
松本 英毅:NY在住コモディティトレーダー
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