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不満のはけ口?医療者がSNS「不適切投稿」の背景 海外では「手術を生中継した」医師が免許剥奪も

東洋経済オンライン / 2025年2月7日 13時0分

グロー医師事件も有名だ。

「ロキシー先生」の愛称で有名だったキャサリン・ロクサンヌ・グロー医師は、TikTokで手術の光景をライブストリーミングし、手術中に視聴者の質問に答えていた。このような行為を少なくとも4年に渡り続けていたようで、2023年7月、オハイオ州医療委員会が医師免許を剥奪した。

あまりにも軽率な行為だが、このようなケースは日本でも多数報告されており、過去の事例をまとめた研究すらある。2016年に福島県立医科大学の研究チームが『医学教育』誌に発表したものだ。

彼らは朝日新聞記事データベース「聞蔵IIビジュアル・フォーライブラリー」などのマスコミのデータベースや検索サイトと用いて、2005~2014年の間に、医療従事者がインターネット上で起こしたモラルハザード事例を集めた。

この研究では20例が抽出され、問題行動の内訳は、守秘義務違反10例、悪ふざけ6例、誹謗中傷5例、不正2例だった。「患者を侮辱した忘年会の余興写真をアップロードした」「『(点滴を)わざと失敗した』と虚偽報告をした」「『死んでほしい』と中傷する書き込みをした」など、今回のケースと似たような問題行動を起こしている。

筆者は、医療従事者がこのような問題行動を起こす背景には、過酷な勤務環境というものがあるように思っている。

労働環境の改善といえば、2024年4月に医師の働き方改革が施行された。これにより一般医師の時間外労働は年間960時間以内に制限され、過重労働を防ぐ目的で、勤務間インターバル制度や業務分散が導入された。

病院経営のしわ寄せが看護師に

問題は看護師だ。

日本看護協会が発表した「2023年病院看護実態調査報告書」によれば、看護師の月平均超過勤務時間は約5.2時間だが、この数字が実態を示しているのか、甚だ疑問だ。

関東学院大学と慶応義塾大学の研究チームが、2023年に『日本看護科学会誌』に発表した研究によれば、研究対象となった6施設62病棟では、日勤1回当たりの超過勤務は、約2時間だった。

日本医療労働組合連合会(医労連)が、全国大学高専教職員組合および日本自治体労働組合総連合会と合同で実施した「2022年看護職員の労働実態調査」によれば、看護職員の約7割がサービス残業を経験しているという。

看護師不足、病院の経営難など、さまざまな要因のしわ寄せが、看護師にいっていることがわかる。

このような状況は、看護師のメンタルをむしばむ。

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