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「人類より豚にふさわしい」と言われた嗜好品 教養として知りたい「カカオの知られざる歴史」

東洋経済オンライン / 2025年2月8日 14時0分

それもそのはず、彼にとって重要だったのは、新航路を開拓し、インドへ到達することだったからです。結果的に、コロンブスによってカカオがヨーロッパにもたらされることはなく、ヨーロッパでカカオが広まるのは、もう少しあと。スペイン人による、アステカ帝国征服後のことになります。

アステカ帝国からの貢物として…

イタリア人のコロンブスがカカオ豆を見かけてから17年後、今度はスペイン人の征服者エルナン・コルテスが、メキシコでカカオと出会うことになります。

1519年、スペイン国王の命を受けて新たな領土の征服に向かったコルテスは、海を渡り、現在のメキシコに到着しました。彼の目的は、スペインの勢力を広げること。コルテスは、湖の上に建設された美しい都市、アステカ帝国の首都テノチティトラン(現在のメキシコシティ)にたどり着きます。

そこで、アステカ帝国の皇帝モクテスマ2世と面会したコルテスは、ヨーロッパ人で初めて、カカオから作られた飲み物「ショコアトル」を味わったとされています。

おそらくそのときの感想は「うわっ、美味しくない……」だったかもしれませんが、それはさておき、彼はカカオがいかにこの地で大切にされているかを目の当たりにしました。

味はともかく、アステカの皇帝が健康のために愛飲していたカカオを知り、コルテスはその価値を見抜きます。そして1512年、アステカ帝国を征服し支配下に置いたスペインは、貢物としてカカオを受け取るようになりました。これがきっかけとなって、スペイン人はカカオ豆を母国へ持ち帰ることとなります。

先ほど「うわっ、美味しくない……」などと思わず書いてしまいましたが、その理由は、当時のショコアトルの味は、極めて独特だったからです。その証拠に、当時メキシコに滞在していたイタリアの探検家ジローラモ・ベンゾーニはこう記しています。

「人類よりは、豚にふさわしい飲み物のように思える」

かなり表現が強めですよね(笑)。

当時のショコアトルは、カカオに唐辛子やトウモロコシを混ぜてすりつぶし、水を加えただけのドロッとした飲み物でした。そのドロッとした苦い味が口に合わず、スペイン人は「どうにかせねば……」と考えたのでしょう。この飲み物にハチミツや砂糖を加えました。

貴族たちを魅了した「ショコアトル」

素晴らしいレシピの誕生です。これこそが、現在私たちが知る、甘くて美味しいチョコレートドリンクのルーツなのです。ショコアトルは、コルテスやキリスト教の修道士らによってスペインに伝わり、貴族階級の人々を魅了しました。

貴族たちがどれほど魅了されたかといえば、スペイン国王フェリペ2世がポルトガルを併合したときに、ポルトガル宮廷に「宮廷ココア担当官」(チョコラティロ)を設けたほどです。ココアへの本気度が違いますね。

そしてその後、エキゾチックで健康にもよいとされるチョコレートドリンクはスペインで大切に守られ、約100年もの間、国外に持ち出されることはありませんでした。

市川 歩美:チョコレートジャーナリスト/ジャーナリスト

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