「フクシマ論」筆者が仕掛ける福島ツアーのうまさ 参加者が口にする"頭でっかちではない魅力"
東洋経済オンライン / 2025年2月11日 14時0分
原発事故による避難地域内には、ワイナリーが2軒、日本酒の醸造所が2軒、クラフトビール工場にクラフトジンの蒸留所まである。つまり一時は「死の町」とも形容されたエリアが、いまや「地の酒の町」となっているわけだ。
しかも、こうした生産拠点ができたのは震災以降のこと。1日では回り切れないほど多様な酒づくりの拠点が集積している場所は、国内外探してもほかにないという。開沼氏の知り合いの生産者の1人もしみじみと語る。
「もちろん、それぞれの生産者や関係者の思い、バックグラウンドはさまざまで一概には言えない。あえて表現するなら、地域資源の豊かさや深さを国内外に発信する必要性に迫られた、もっと言えば世界で最も地域の魅力の説明責任を要求された地域だということ。そういう時空間が災害によって発生したということです」
例えば海外で「福島には人が住めるんですか?」と問われたことが原体験になり、この地域で新たな事業を起こしたと語る人は珍しくない。放射線の問題もあって避難せざるをえず、産業も止まってしまった。にもかかわらず、なぜここで今、生活・生業を再生するのか──。この地はそう問われ続けながら、それに答えを出そうと奮闘してきたと開沼氏は解説する。
とはいえ、地ワインや地ビールの開発を通したまちづくりは決して珍しいものではない。他地域と福島とでは何が違うのか。
「物語の分厚さが違うんです。何もしなければ『死の町』になっていた。それでも生き抜き、再生してきた。つまり、生命力を感じさせるという点では、ほかの地域に負けるわけがないんです」(開沼氏)
開沼氏によれば、酒づくりを主導する主体も世代も、ルーツも多様だという。50代もいれば20代も、地元で生まれ育った人間も外からの移住者もいる。共通するのは「結びつける力」だ。
例えば南相馬市小高にある醸造所「haccoba」は、どぶろくの製造方法をベースに、酒の新たな可能性を模索する。生産している「猪口酒 −しょこらっしゅ−」は、東京・蔵前のクラフトチョコレートと長野の老舗七味唐辛子屋との連携によって生まれた。さわやかさとスパイス感との共存は、もっと飲みたいと思わせる魅力をもつ。
また、定番酒の「はなうたホップス」は、唐花草(からはなそう)から作られる。これはビールの原料であるホップの近縁で、日本在来の野草だ。口に含むとビールのようなさわやかさとコメの甘さのハーモニーが楽しめる。あまり注目されていない野草と、近所でとれたコメとを酒を通して結びつけているのだ。
再ブランディング化に向けた“うまいツアー”
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