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若手と企業が考える「安定している」の意味は違う そもそも「今どきの若者はすぐ辞める」も間違い

東洋経済オンライン / 2025年2月11日 12時0分

若者にとっての安定とは、会社がつぶれるかどうかではなく「自分が食いっぱぐれないかどうか」という意味での安定です。つまり、会社そのものの安定というよりも、自身のキャリアの安定なのです。

最近では、文系未経験からシステムエンジニア(SE)に就職する例も多く、インタビューでも多く出会います。SEの需要が大きいという事情もありますが、文系未経験からSEになる方の多くが「SEとして手に職をつけておけば、将来困らない気がしたからSEになった」という趣旨のことを話します。

ほかにも、営業職からSEへ転職した方、プログラミングスクールに通ってみたけど挫折し、事務職で転職を目指した方などもいますが、ほとんどが同じような理由です。

早期離職率についてのクイズ

会社の安定ではなく自身のキャリアの安定を求めていると書くと、今の若者はいかにも利己的で、会社への帰属意識が低く忠誠心がないようにも聞こえるかもしれません。

また、若者の気質の変化によって、会社への帰属意識が以前より低くなったのであれば、若手社員が転職していくのは仕方ないように思う方も多いでしょう。

でも、ちょっと待ってください。今どきの若者は、昔に比べて辞めるようになっているわけではありません。少なくともここ20年で見れば、若手社員が昔よりも辞めるようになったという事実はないのです。

私は離職対策に関する講演、研修などを年間で計100本以上おこなっています。内容は講演や研修の目的によっても異なりますが、若手社員の離職対策がテーマの場合、冒頭でこんなクイズを出しています。

「大卒の新卒入社3年以内の離職率(早期離職率)は、20年前に比べて10ポイント以上上がっている。マルかバツか」

みなさんはどう思いますか?

これまで数多くの企業、団体で同じ質問をしてきましたが、おおむね70~80%の方が「マル」と回答します。つまり、20年前に比べ、今の若手の離職率が高いと思っている人が圧倒的に多いのです。

残念ながら正解はバツです。20年前と変わっていないどころか、微減しています。

そもそも「今どきの若者はすぐ辞める」が間違い

厚労省が発表している新規学卒者の3年以内離職率のデータでは、2021年卒の大卒新卒の3年以内離職率は34.9%です(発表は2024年10月)。

では、20年前の2001年卒はどうかというと、35.4%と、実は現在よりも高い数字です。実は2000年~2005年卒あたりは、最も早期離職率が高い時期。ですから、20年前に比べると今の若者のほうが辞めにくいのです。このことから「最近の若い人は昔に比べてすぐ辞めるわけではない」ことは明らかです。

ここまで、大卒のデータを解説しましたが、高卒はどうでしょうか?

実は、高卒はもっと衝撃的な結果です。高卒は20年前と比較して、今では圧倒的に離職率が低くなっています。最も高かった2000年卒は50.3%ですから、高卒入社の半分以上が3年以内に辞めていることになります。

一方で、最新データである2021年卒は38.4%です。これは歴代で6番目に低い水準です。

大卒の場合は、バブル期の早期離職率が低い傾向にあるのに対して、高卒に関してはリーマンショックの影響を受けた2009年卒が歴代で最も低く、その後もバブル期より低い水準で推移しているのが特徴です。

高卒も大卒も、今の若手社員が昔に比べて辞めるわけではありません。「若手社員はなぜ辞めるのか?」を考える場合には、まずこの事実をおさえておく必要があります。

井上 洋市朗:カイラボ代表取締役

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