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理系出身の彼女が「ひな人形」の家業を継いだ理由 埼玉県川越市「春蔵」 キャリアの先に描いた夢

東洋経済オンライン / 2025年2月12日 14時0分

父の津田直人さん(左)と、娘の祐希奈さんが織り成す、次世代へ伝えるひな人形とは(写真:春蔵)

おしゃれな色合わせの十二単(ひとえ)に、端整な顔立ちーー。「モダンな色彩とクラシックな形の融合」がコンセプトのひな人形を制作・販売しているのは、埼玉県川越市の「春蔵」だ。

【写真】インテリアに溶け込むデザインで飾りやすい「春蔵」のひな人形は、自分用に買い求める大人の女性も多いという

春蔵では、ひな人形職人である父・津田直人さんが制作を担当し、娘の祐希奈さんがひな人形デザイナーとして企画から営業・広報・経理などを行っている。

「自分が家業に入るとは、思ってもいなかった」と話す祐希奈さんは、大学の理学部で学んだ後、民間企業で財務経理や営業をしていた異色の経歴を持つ。なぜ彼女は伝統産業の世界に足を踏み入れることを決意したのだろうか。

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ひな人形デザイナーになる前の意外なキャリア

大学で大腸菌のタンパク質に関する研究をしていた祐希奈さんは、「もともと理系科目が得意だったんです。とくに生物が好きだったので、理学部に進学しました」と話す。就職活動では専門分野の研究職や、繊維・化粧品業界での就職を目指した。

しかし、面接を受けるうち「業界や仕事内容よりも、社風を重視したい」と考えが変わり、チャレンジングな環境だと感じたIT企業に入社。財務経理の部署に配属された。

「当時、同じフロアに人事労務や広報といった部署があったので、財務経理の仕事だけでなく、組織の動きや意思決定の過程を体系的に学ぶことができました。経営会議を聞いたり、経営陣と話したりする機会もあり、大きな経験になりましたね」(祐希奈さん、以下の発言すべて)

父・直人さんの実家である「津田人形製作」は100年の歴史があり、埼玉県川越市で約60年、制作を続けてきた老舗。直人さんは、現在も制作を続けている祖父・有三さんのもとで修業を積み、「自分らしいひな人形を世に広めたい」と2015年に独立した。

父のひな人形を次世代につなぎたい

ひな人形を作る祖父と父の背中を、幼いころから見てきた祐希奈さんだが、伝統を受け継ぐ難しさや重みを感じていたからこそ、「家業を継ぐ選択肢は、自分のなかに全くなかった」と話す。

では、どうして「家業を継ごう」と思ったのだろうか。

「社会に出て、組織が動くさまを間近で見て『いつか自分も経営に携わってみたい』、『物事を大きく動かしてみたい』と思うようになったんです」

何らかの形での起業を考え始めた祐希奈さんだったが、当初は商材が思い浮かばなかった。そんなときに帰省した実家で目に入ってきたのが、父が作ったひな人形。

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