1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「日本一忙しい戦闘機部隊」異色の経歴もつ南国のF-15飛行隊長 どう隊員を束ねているのか

乗りものニュース / 2024年6月1日 9時42分

離陸する第204飛行隊のF-15J戦闘機。2023年、全国の戦闘基地の中で最もスクランブル回数が多かったのは那覇基地(石津祐介撮影)。

日本で最も緊急発進の回数が多い那覇基地の第9航空団。そこでF-15Jを運用する第204飛行隊の隊長に話を聞きました。飛行隊のリーダーとして十人十色のパイロットを率いる飛行隊長は何を心掛けているのでしょうか。

最強のイーグル飛行隊を目指して

 航空自衛隊の戦闘機部隊で、日本の最南端に配備されている第204飛行隊は、1964(昭和39)年12月1日に発足し、今年(2024年)で創隊60周年を迎えます。加えて、那覇基地に移駐したのは、2009(平成21)年のため、こちらもちょうど15周年です。

 このような節目の年を迎えた第204飛行隊を率いるのが、飛行隊長の佐藤朋大 2等空佐です。

 佐藤隊長の経歴は、航空自衛隊のパイロットとしては異色です。元々は、2等空士の整備隊員から自衛隊のキャリアをスタートさせ、そして憧れだったパイロットを目指すことになります。

「小さいころから戦闘機パイロットになりたかったのですが、視力が悪く当初は無理でした。とはいえ、戦闘機に関する仕事には就きたかったので、航空自衛隊に一般隊員として入り、飛行教導隊での武器弾薬整備員や、情報本部東千歳通信所での情報員などを経験しています。その後、視力基準が緩和され眼鏡などで矯正することが可能になったので、改めて一般幹部候補生の飛行要員として再入隊し、各地の飛行隊や航空幕僚監部での勤務を経て、2023年に第204飛行隊長として着任しました」(佐藤隊長)

 第204飛行隊は第304飛行隊とともに、那覇基地に司令部を置く第9航空団の飛行群に所属しています。両部隊とも「イーグル(鷲)」の愛称で知られるF-15J戦闘機で対領空侵犯措置などの任務にあたっていますが、第204飛行隊はこのイーグルを部隊マークのモチーフにしています。飛行隊のシンボルともいえる部隊マークについて聞いてみました。

「我が第204飛行隊の部隊マークは白頭鷲の横顔(イーグルヘッド)をシンボルにしていますが、これには『Eagle of Eagles(イーグルの中のイーグル)』、すなわち最強のイーグル飛行隊を目指すという意味が込められています。また、第9航空団にちなんで冠羽は9つあるんですよ」(佐藤隊長)

 那覇基地への移駐以降は、沖縄の方言で「美しい海」を意味する美ら海と部隊マークの白頭鷲を掛け合わせ、飛行隊の愛称を「美鷲(ちゅらわし)」としているそうです。

飛行隊長のお仕事とは?

 飛行隊のリーダーである飛行隊長ですが、隊員を管理する以外にもその役目は多岐に渡ります。

 飛行隊に所属する隊員は主に戦闘機パイロットで、部隊は飛行隊の種業務を支える総括班と、各種任務を行う飛行班で構成されています。飛行隊長は、飛行隊を率いるリーダー、つまり指揮官として各種任務を遂行するとともに、飛行隊の隊員を管理しています。管理者とはいえ、隊長みずからも対領空侵犯措置のアラート待機や日々の戦闘訓練も行います。そして最前線では、パイロットの行動が重要になってくるといいます。

「我々は、南西域における空の防衛の最前線として、平時から有事まで切れ目なく対応することが求められます。このため、対領空侵犯措置任務や、防空に係る各種訓練等を行うほか、最新の知識を習得して新たな脅威に対応できるよう努めており、いかなる状況においても確実に任務が遂行できる操縦者などの育成を行っています。与えられた任務を全うすべく、飛行隊長が先頭に立って隊員を率いること、そして、中核となって日々の訓練に臨むとともに、隊員の管理を行うことが飛行隊長の役割であると認識しています。

 また、飛行隊長は、管理者(マネージャー)であるとともに、対領空侵犯措置任務や訓練も(プレーヤーとして)行う、いわゆるプレイングマネージャーとしての立場であることが、他の指揮官との大きな違いです。確かに行わなければならないことは多岐に渡りますが、プレーヤーとしての立場でもあるため隊員の気持ちが分かると思いますし、空曹士の経験があるからこそ活かせる視点や私なりの強みもあると感じており、やりがいのある日々を過ごしています」(佐藤隊長)

 なお、昨年度(2023年度)に航空自衛隊が行った緊急発進の数は669回にものぼります。そのうち約6割の401回が南西航空方面隊、すなわち第9航空団によるものであり、これを365日で割ると1日あたり1回強の頻度で緊急発進(スクランブル)を行っている計算になります。

「この数字からも、我々がいかに最前線として緊張の強いられる環境で勤務し、また任務を行っているか、おわかりになるのではないでしょうか。特に、南西域における対象国の航空活動は依然として活発であることから、24時間365日いかなる状況でも対応できる態勢を保持しています」(佐藤隊長)

最前線部隊のマネージャーとして

 このように、日々、南西諸島の最前線で対領空侵犯措置の任務にあたるパイロットたち。彼ら(彼女ら)を束ねる飛行隊長は、飛行隊の能力を維持するため、佐藤隊長は管理職として様々なマネージメントを行っているといいます。

「若年隊員の早期戦力化などによる任務遂行能力の維持向上を追求しているほか、緊張の強いられる環境だからこそ、隊員のモチベーションや勤務時間の管理が重要であり、組織要求と自己実現の両立を図ることを目標に日々任務に就いています。また、最前線で各種任務を行うプライドは保持しつつ、F-15を飛ばすためには、飛行隊の仲間はもとより、様々な部隊や隊員らの支えや協力があって成り立っているということを常に実感しつつ、互いをリスペクトし共に高め合う関係を築くことが必要でしょう」

 そして、パイロットを指導するうえで飛行隊長みずから、各種手順や決まり事などを基本に沿って行うことに加え、「挨拶・掃除・身だしなみ」といったベーシックマナーを率先して示しているといいます。そのうえで、心と体の健康管理を徹底すること、そして「運も偶然ではないこと」と捉え、何事も「やるのであれば前向きに取り組むこと」を指導していると、佐藤隊長は語っていました。

 映画『トップガン・マーベリック』のように、個性的なパイロットをまとめ上げ心を掴んでいくには、隊長の力量が問われるというという事でしょうか。

 最後に飛行隊が60周年を迎えるにあたって、隊長に今後の抱負を伺いました。

「第204飛行隊は、隊員の士気や帰属意識が非常に高く、任務などに対する高い意識を持ち、現状に満足することなく改善気風に満ち溢れた部隊であると自負しています。このような第204飛行隊が、歴史ある戦闘機部隊として60周年を迎えることができること、そして何より、このタイミングで、飛行隊長として頼もしい仲間とともに日々を過ごせることを誇りに、また大変嬉しく思います。同時に、飛行隊長として歴史を繋ぐ責任も感じています」

「60周年の節目を迎えるにあたり、創隊以来の歴史や歴代の先輩方の努力に思いを致すとともに、残すべきものは継承しつつ、我々が新たな歴史を創り、後進へ繋げていきたいと思います。最後に、今後も南西域防空の要として、ワンチームとなって、その本分を果たしていきます。我ら、美鷲!!」

【コックピットからの景色!】F-15パイロットの視界を動画で見る

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください