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「ブルーインパルス」には必須!? 飛行機の安全性が劇的アップ! 米軍生まれの「夢のシステム」

乗りものニュース / 2025年1月14日 6時12分

航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」。アクロバット飛行は背面で飛ぶシーンが多い(画像:航空自衛隊)。

近年、アメリカで航空機に関する画期的な安全装置が誕生しました。「Auto-GCAS」と呼ばれるその装置は、地面に激突しそうになる飛び方を、機体側が事前に予知し、危うくなると回避してくれるそうです。

F-16戦闘機の死亡事故の4分の3は地上衝突

 戦闘機の操縦桿を握るパイロットは、常人では到底耐えられないような過酷な環境に身を置くことを余儀なくされます。その代表的な例として挙げられるのが、強烈な重力負荷、いわゆる「G」です。特に現代の戦闘機においては、急旋回や急激な機動を行う際に、パイロットに対して強大なGがかかります。場合によっては、その数値は9G以上に達することもあります。

 9Gというのは、自身の体重の9倍の力が身体にかかることを意味します。この想像を絶する重力下では、血液が足元に移動し、脳への血流が減少するため、視界が暗くなり、最悪の場合には失神してしまうことがあります。こうしたGによる意識の喪失は「G-LOC(ジーロック)」と呼ばれています。

 戦闘機の機動性を高めるためには、Gは不可欠な要素である一方、パイロットにとっては最大の脅威でもあります。高いGに耐えるためには強靭な肉体が必要とされますが、どんなに訓練を積んだパイロットであっても、人間である以上、Gの影響から完全に逃れることは不可能です。

 加えて、悪天候時や夜間飛行においては、自分の姿勢感覚を失う「空間識失調」いわゆる「バーティゴ」が発生することもあります。これは、どれほど経験豊富なパイロットであっても起こり得る現象で、全てのパイロットに対して常に計器を信頼するよう訓練で徹底されていますが、いまだに解決困難な大きな問題であることには変わりません。

 Gによる意識喪失や空間識失調は、超音速に達する戦闘機においては、たとえ短時間であっても致命的な事故に繋がる可能性があります。

 アメリカ空軍の統計によると、F-16「ファイティング・ファルコン」(荷重制限9G)における死亡事故の75%は、操縦可能な状態でありながら地面に衝突する「CFIT(Controlled Flight Into Terrain)」であるとされています。つまり、これら死亡事故のほとんどは機械的な故障ではなく、人的要因によって発生しているといえるでしょう。

飛行機が自動で地上衝突を回避してくれる!?

 しかし、近年になり、このようなパイロットに対する死の危険を克服するための技術が登場しました。それがロッキード・マーチンによって開発された「自動地上衝突回避システム(Auto-GCAS)」です。このシステムは、機体の姿勢、高度、速度、デジタル地形データなどをリアルタイムで分析し、地上衝突の可能性を予測します。機体が墜落の危機に陥った際には、自動的に機首を上げ(背面飛行の場合は水平に戻した後)、安全な高度に自動復帰させるのです。

 YouTubeでは、Gによる意識喪失からAuto-GCASで復帰したF-16の映像を見ることが可能です。「Auto GCAS」で検索すると出てくる当該映像では、マッハ1.1で降下中にリーダー機と思われるパイロットが「2番機、機首を上げろ!」と繰り返し警告するなか、自動的に水平飛行に戻る様子が映し出されています。

 アメリカ空軍では、Auto-GCASはまずF-16に導入され、F-22やF-35などにも順次適用されています。このシステムは、ロッキード・マーチン社製のF-16、F-22、F-35だけでなく、将来的にはボーイング社製のF-15やF/A-18といった戦闘機にも搭載されることが見込まれています。

 ロッキード・マーチンの予測によれば、Auto-GCASが導入されることで、今後15年間で34機の航空機、25人のパイロットの命が救われるそうで、23億ドルのコスト低減も見込まれるといいます。

 もしかしたら、近い将来、航空自衛隊も導入を決め、F-2やF-15といった戦闘機にも搭載されるかもしれないでしょう。

 こうした技術の進歩によって、21世紀後半にはG-LOCやバーティゴによる重大な事故が減少し、パイロットの安全性が飛躍的に向上していることを望んでやみません。

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