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全国の刑務所や少年院でも上映! ドキュメンタリー映画『おまえの親になったるで』 草刈健太郎さん「元犯罪者の更生は“誰かがやらなあかん”」【インタビュー】

エンタメOVO / 2024年6月28日 8時0分

 11年前、最初に少年院から出院した子を預かったときは、一週間したらすぐにいなくなったんです。そんなやつばかりでした。逃がしたらあかんと思ってやっているけれど、逃げるので「逃げてもいいけれど俺に会ってくれたら小遣いをやるから、絶対に電話に出ろよ」と言うと、大体電話に出てくれるようになって。1回逃げて、また悪いことをしたり、お金がなくなったりして帰ってくる。少年院や刑務所を出たからといって、いきなり4番バッターになる子なんて絶対にいないですね。たまにいますけれど、そんなのは1安打ぐらいです。

 「更生」というのは難しいですが、放ったらかしにしたら絶対にまた悪いことをすると分かっているので、5年掛かるか10年掛かるか分かりませんが、何回繰り返してもやっていかないといけないなと思います。更生の道筋は人それぞれ違うので「更生の方程式」なんてないですが、自分のところで社会的な基礎知識くらいは身に付けてほしいです。もともと発達や精神的な特性を持っている人も多いので、医療につなげていくことも大事なのかなと思います。

-この取り組みをしてきて、日本の教育環境や親や家族、学校の関わり方、少年法や犯罪に関する法律などの面において、どんな課題や問題点があると思いますか。今の日本社会に伝えたいことがあれば教えてください。

 今は心の中に自己肯定感ができていない子どもが多いのかなと思います。僕らが少年のときは悪いことをするにしても、友達の家に集まって皆でたばこやシンナーを吸おうかとか、何かしらのコミュニティーがありましたが、今は携帯電話もあって人と人が接する機会がなくなってきたのもあると思いますね。うちの寮は4LDKなのですが少年院や刑務所に入っていたやつは、ほぼ部屋から出てきませんから。

 うちに来る子は施設で育った子も多くて、その子らは施設の職員を全く親とは思えていないですね。赤ちゃんの時から施設で集団で育てて、まともに育つ子もいるかもしれませんが、施設はやはり役所なので、お子さんに恵まれない方や本当に自分の子どものように育ててくれる方のもとで育ててもらえるような里親制度は、これからもっと増えていくべきだと思います。「三つ子の魂百まで」というように物心が付く時期までに、そういう愛情や自己肯定感を育てないといけないような気がしますね。

 それから被害者と加害者の支援については、国はもっと被害者支援に対する制度を確立してフォローしてほしいと思います。例えば、一家の大黒柱がある日、殺されて死んだら被害者家族は生活ができなくなりますよね。(日本では)1日1人以上が殺人や不慮の事故に遭っているので、うちの家族に限って身内が殺されるなんて…と思ってもみなかったことが一瞬にして起こったときに、支援がないと、そういう二次被害が起こるんです。被害者家族を放ったらかしにするのではなく、周りが助けるのか行政が助けるのか。交通事故だったら車の保険がおりますが、殺人保険なんてないですよね。そんな被害に遭っても、葬式代なども含めてお金も掛かるわけです。国が加害者に代わって被害者に賠償金を建て替える仕組みを作ったり、被害者と加害者の支援を両輪でやる必要があると思います。僕は被害者をこれ以上作らないために“加害者を作ったらあかん”という気持ちで活動していますが、僕自身は被害者でもあるので、そちらも大事だと思っています。

 テレビ大阪ドキュメンタリー映画『おまえの親になったるで』は、6月28日からテアトル新宿、7月19日からアップリンク京都で公開。

(取材・文・写真/小宮山あきの)


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