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「この役を通して、言葉をどう伝えるのか、表現するのかということを探っていたような気がします」『劇場版 アナウンサーたちの戦争』森田剛【インタビュー】

エンタメOVO / 2024年8月13日 10時38分

 こうやって人と対峙(たいじ)している時も、和田さんは結構人の話を聞いていないんです。信念が強過ぎて、これはこういうものだというのがあるから。だから、誰かとやり合っていても、自分の思いが強いから相手の話を聞いていない、響いていないことが多いです。でも、その裏でめちゃくちゃ悩んでいる。忙しい人ですね。だから毎日くたくたでした。でも、そういう経験ができたことは、役者としての瞬発力や忍耐力が鍛えられた気もするし、すごく楽しいことでもありました。

-アナウンサーが国策に利用されて、戦場の最前線にまで連れて行かれるということについてはどう思いましたか。

 そのことについては僕も知りませんでしたが、僕の周りでも結構知らない人が多いんです。だからそれだけでもやってよかったなと思います。ここに出てくるアナウンサーの方は、自分の中に信念があって、誰も間違ってはいないんです。和田さんは、自分の言葉で人々を楽しませたいという純粋な気持ちだったし、ほかのアナウンサーの方もそうだったと思います。それが、戦争のせいで取り返しのつかないことになってしまって…。だから撮影中も、皆が信念を持ってぶつかり合ったり、熱い思いを持っているのに、何で皆が戦争に傾いていってしまったのかと思いました。そうしたどうにもならないことがあることを、今の若い人たちに感じてもらえたらいいなと思います。

-結果として戦争に協力をしてしまうという、理不尽で葛藤の多い役だったと思いますが、どのようにして自分の中に落とし込んでいったのでしょうか。

 集中することでした。実際に起きたことでも、当時の人はその先に戦争が起きるとは思ってもいなかったと思うんです。でも演じている僕らはその先に起きることを知っています。だから、起きることの真実に対して集中する、そこに全力を傾けるということを考えながら人とも対峙していたし、いろんなシーンで常に集中していました。

-言葉を発して他人に影響を与えるという意味では、アナウンサーも役者も共通点があると思いますが、和田さんに共感する部分はありましたか。

 共通点があるからこそ魅力を感じたんだと思います。やり方が微妙に違うかもしれないけれど、自分の中に入れてそれを出すという部分では通じるところがあると思います。和田さんは電車の中とかでもブツブツしゃべっているんです。僕もせりふを覚える時にはブツブツしゃべっている(笑)、その辺は似ているというか一緒だなって。和田さんは、飯を食っていても、人と会っていても、何をしていても、アナウンスをするということが常に頭の中にある。僕も常に自分のせりふを覚えなきゃいけないという思いがある。そこは何か一緒だなという感覚があります。

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