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「見ている人にとって、兵士郎が自己投影できるような役になるといいのかなと思いました」仲野太賀、「この映画を見て仲野太賀みたいな役者になりたいと思う人が絶対に出てくると思います」白石和彌監督『十一人の賊軍』【インタビュー】

エンタメOVO / 2024年11月2日 19時10分

仲野 頑張ります(笑)。

-仲野さんは、鷲尾兵士郎をどんな人物だと解釈して演じましたか。

仲野 兵士郎は剣術の達人で、阿部(サダヲ)さんが演じる内匠の指示に従って、賊たちを引き連れてとりでに立てこもります。新政府軍と旧幕府軍との間で板挟みになりながらも、侍としての誇りもあって、賊たちとは立ち位置も役回りも明確に違う中で戦(いくさ)に巻き込まれていきます。けれども、物語が進むにつれて兵士郎の信じるものや立ち回り方も大きく揺らいで変化していき、あるシーンにおいて自分自身も賊であると気付くんです。そうした兵士郎の変わっていく姿というのはすごく意識しました。

 この作品は、派手なアクションもありながら、戦いが終わった後に、痛快さではなく何だか分からないむなしさが残るんです。多くの人が死んで、声なき者の声が届かぬまま戦いが終わっていく。歴史上ではこういうことが重なってきたのだというのがすごく表れている作品だと思います。その点で、見ている人にとって、兵士郎が自己投影できるような役になるといいのかなと思いました。

-白石組はいかがでしたか。

仲野 もうバチバチにしごかれました(笑)。脚本の通り、どうしたって大変にならざるを得ない物語で、大変な撮影だったんですけど、結構な数のキャストが戦をやっている中で、どんどん状況がしんどくなってきたところを、監督が腕を組みながら遠目からずっと見ているんです。それで、こっちが「もう駄目です。もうきついっす」と悲鳴を上げたところで、目がキラキラと輝き出して、「よしカメラ回そう」みたいな。すごい監督だなと。熟成するのを待っているわけです。

白石 それが仕事だから(笑)。ただ、僕は群像劇が得意なつもりだったんですけど、それは、こっちの勢力は5人で、もう一方の勢力は例えば7人でみたいな作品だったんです。それが今回は10人以上の人数が同じ場所にいる。それで「やろうぜ」と言った時に、みんなが一斉にリアクションを取るんだけど、それだけで5、6カットもあるんです。だから撮影がなかなか終わらない。同じ群像劇でも違うんだ、こんなに大変なんだと思いました。

-改めて、時代劇の魅力とはどんなところにあると思いますか。

白石 結局はファンタジーだということです。資料を探せばいろいろと出てきますけど、その時代に生きいていた人は今はいないわけですから。だから、積み上げたものを壊せる面白さとか、リアルなところが追求できる面白さとか、映画のエッセンスが詰まっているところがある。やっぱり今とは社会の仕組みが違うので、その中で起きる不条理を描きやすいということです。ただ、人間の喜怒哀楽は変わらないので、基本的にはそれを描くことで、現代へのメッセージを送りやすいというか、やれることが本当にいっぱいあるなと思います。別に時代劇はジャンルではないので、時代劇の中でいろんなジャンルが作れるということです。そう考えるともう無限に可能性があるかなと。

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