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富士山大噴火から311年 「宝永噴火」がいま発生したら?

ウェザーニュース / 2018年12月16日 5時30分

ウェザーニュース

311年前の12月16日に富士山が大噴火しました。それまで富士山は平均して100年に1度噴火していましたが、これまで300年以上も鳴りをひそめています。富士山は「噴火するか・しないか?」ではなく、「いつ噴火するか?」が注目されているのです。

江戸にも火山灰が降り積もった

1707年12月16日(太陽歴)午前10時頃、富士山は南東斜面から大噴火し、噴煙は上空2万mまで立ち昇りました。この噴火は「宝永噴火」と呼ばれ、その痕跡は「宝永火口」として今も残っています。

噴火は12月31日未明まで16日間断続的に続き、火山礫(れき)や火山灰は偏西風に乗って、静岡県北東部、神奈川県、東京都、さらに100km以上離れた房総半島にまで降り注ぎました。

富士山東麓の須走村(静岡県小山町)では降ってきた熱い火山岩石で37軒が焼失、残った39軒も3mを越す火山灰の重みと度重なる火山性地震で倒壊しました。皆瀬川(みなせがわ)村(神奈川県山北町)では80〜90cmの降灰で集落80軒のうち12軒が崩壊しました。

江戸の町(東京都)にも大量の火山灰が降り、昼間でも暗くなり、ロウソクを灯さねばならなかったといいます。2〜5cm積もった降灰は強風のたびに細かいチリとなって舞い上がり、多くの人が呼吸器疾患に悩まされました。

噴火による死者は記録されていませんが、噴火が終わっても耕作地に降り積もった火山灰を取り除くのに何年もかかりました。その火山灰が流れ込んだ河川は川床が上がり、たびたび氾濫を起こし、長期にわたり農民たちを苦しめました。

「宝永噴火」がいま発生したら

今の時代に富士山が噴火したらどうなるのでしょうか。富士山火山防災協議会が、「宝永噴火」と同規模の噴火が現在発生した場合の被害想定を行っています。

【人的被害】
噴石等の直撃で約1万3600人が死傷

【建物被害】
木造家屋が約280〜700戸倒壊

【道路】
降灰により東京・神奈川・千葉・茨城・静岡の約3700km〜1万4600kmに及ぶ道路が通行不能

【鉄道】
車輪やレールの導電不良による障害や踏切障害等により、東京・神奈川・千葉・静岡等で線路延長は最大で約1800kmが混乱

【航空】
大気中の火山灰により、羽田・成田など6空港で1日あたり515便、約21万9000人に影響

【農林業被害】
降灰による商品価値の喪失・降灰付着による樹木の枯死・牧草地の枯死等で、稲作被害が約18万3000ha、畑作被害が約6万4000ha、森林の壊滅的被害が約700ha

【観光産業】
降灰により東京・神奈川・千葉・静岡等で観光需要の減少

【その他の産業】
交通障害や停電などで、東京・神奈川・千葉・茨城・静岡では産業活動が停滞

以上は降灰による被害想定ですが、そのほかにも洪水や土石流による建物被害や農作物被害が出ます。合わせて被害総額は約1兆2000億円〜約2兆5000億円と試算されています。

噴火のパターンにより被害も違う

宝永噴火は「プリニー式噴火」といって、地下のマグマ溜まりからマグマが押し上げられる際、圧力が減少して発泡し、膨大な量の噴石や火山灰、火山ガスが吹き出したものですが、マグマは流出しませんでした。過去には「ストロンボリ式噴火」でマグマが流出したこともありました。

富士山の次の噴火がどういうパターンになるのか明らかではありませんが、2004年に作成された「富士山火山防災マップ」(ハザードマップ)では、噴火口が生じうる領域、溶岩が流れる範囲、土石流が発生する範囲などを特定しています。

富士山のハザードマップは2020年に改定を予定しています。地元の富士吉田市などでは避難訓練も行われています。

富士山はいまも、「いつ噴火するか」が注目されている活火山のひとつなのです。


参考資料など

『宝永4年(1707)富士山噴火』(内閣府)、「富士山ハザードマップについて」(富士山火山防災協議会)

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